<社説>古酒表示厳格化 県全体でブランド確立を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 8月1日から、3年以上貯蔵した泡盛古酒を100%使わなければ「古酒」と表示できなくなる。

 県酒造組合が、表示基準を改定した新たな公正競争規約を適用すると発表した。
 これまでは「古酒」と名乗っていても基準が曖昧で、100%古酒であるかどうかが分からなかった。表示基準の厳格化が、消費者の信頼に応えるとともに、品質で競争する改革の一歩になることを期待する。
 泡盛は古酒に少量の泡盛をつぎ足す「仕次ぎ」という手法で熟成するので、3年以上の泡盛が51%以上含まれていれば古酒と見なされてきた。古酒の定義が曖昧で割合の表示も定められていなかったため、過去に複数の酒造所が公正競争規約の基準に違反した表示をする不祥事が起きた。表示の厳格化は当然の措置だ。
 泡盛の総出荷量(アルコール度数30度換算)は、沖縄ブームで消費が拡大した2004年をピークに10年連続で減少している。県酒造組合によると、14年の総出荷量は、前年比3・1%減の2万21キロリットルだった。このうち県内出荷はピーク時の約80%に縮小、県外出荷もピーク時の約47%の水準まで落ち込んでいる。
 国内の酒類市場は縮小傾向にある。若者のアルコール離れや、60歳以上の飲酒が減少するなど高齢化も消費に影響しているようだ。
 泡盛の競争力を高めるため、古酒ブランドの確立が提唱されて久しい。08年に泡盛メーカー43社が協同組合を設立し、10年間で古酒2500キロリットルを貯蔵する計画「琉球泡盛古酒(クース)の郷(さと)」が始まった。しかし、資金不足から計画に陰りが見える。
 古酒表示を厳格化しても、肝心の売り物がなければ、画餅になりかねない。泡盛業者は小規模零細企業が多い。ここは一つにまとまって、当初の計画の実現に知恵を絞ってほしい。金融機関や行政のさらなる支援も必要だろう。
 追い風も吹いている。黒麹(こうじ)菌を使った琉球泡盛を国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界無形文化遺産登録を目指す取り組みだ。登録されると海外で泡盛の認知度が一気に高まるだろう。観光を含め波及効果は計り知れない。
 琉球泡盛を大事にすることは、固有の文化に誇りを持つことである。今回の表示厳格化を一歩として、県全体で泡盛ブランドの確立に取り組みたい。