<社説>ハワイ移動編集局 未来の交流強化の礎に


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 115年前の移民を起点にした歴史と文化に根差した沖縄とハワイの永続的交流の礎を確認し、アイデンティティーを強める新たな方策が次々に打ち出された。

 沖縄県とハワイ州の姉妹都市締結30年を記念して開かれた琉球新報移動編集局フォーラム「絆 染みてぃ いちまでぃん-ハワイ・沖縄の未来」(共催・ハワイ沖縄連合会)は、熱い議論が展開された。
 文化、教育、福祉・遺産のテーマを軸に、沖縄からの訪問団とハワイの県系人が全員発言方式で議論した円卓は18に上り、壮観だった。未来にわたる交流拠点となる「ハワイ沖縄プラザ」も着工され、双方の交流が多面的、具体的に深化する新時代の到来を印象づけた。
 昨年12月に県系のデービッド・イゲ州知事が誕生し、沖縄、ハワイのアイデンティティーへの自覚と交流のエネルギーを高めている。
 基調講演でイゲ知事は「ハワイ、沖縄の友好関係はとても生産的で質が高い。異文化への理解を深める高校生、大学生の交換プログラムは活発だ」と若い世代の交流に手応えを語った。再生可能エネルギー開発や普及をめぐる協力関係の強化にも意欲を示した。
 翁長雄志知事は、沖縄戦後の郷土復興を支えたハワイの県系人の手紙の一節を「胸が熱くなる」として紹介した。「このお金でお父さん、お母さんを大切にし、弟や妹を学校に通わせてください」
 ハワイの県系人が故郷に寄せた深い愛着は、ルーツである沖縄の文化継承を実践する3世、4世にも脈々と息づいている。県立芸大への留学経験者が披露した見事な琉舞にそれが象徴されていた。
 ハワイ州は消滅の危機にあったハワイ語を公用語に定め、学校の授業でも積極的に取り上げて言語復活に成功している。翁長知事は「その方策を持ち帰りたい」と述べ、しまくとぅば継承に生かす方針を示した。アイデンティティーの根幹である言語を守るハワイの先進性を学びたい。
 円卓討論は、友好関係の土台を築いた1世、2世への感謝を形にする手だてや、沖縄の文化、歴史を共有する具体策をめぐる議論で熱を帯びた。沖縄とハワイをインターネットで結んだ同時授業や、双方の近現代史を分かりやすく学べる教科書と副読本の充実など、目を見張る提案が多くあった。
 この成果を生かし、沖縄とハワイの一層の絆の強化につなげたい。