<社説>土砂規制条例成立 国は粛々と従うべきだ


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 埋め立てに使う土砂などの県外からの搬入を規制する条例案が県議会最終本会議で、与党などの賛成多数で可決、成立した。

 条例の目的は、外来生物の侵入を防止することで生物の多様性を確保し「祖先から受け継いだ本県の尊い自然環境を保全すること」にある。世界に誇る沖縄の自然を後世に残す意義ある条例である。
 国が強行する米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う新基地建設も対象だ。新基地建設反対の民意を実現する力になる。県には条例の厳格な運用を求めたい。
 新基地建設の埋め立てには2100万立方メートル、県庁70棟分もの土砂が使われ、うち8割が県外から搬入される。このため、外来生物混入の有無を調べる県の調査には時間がかかることが予想される。
 菅義偉官房長官は条例制定を受け、新基地建設に影響が出ることを念頭に翁長雄志知事との協議に意欲を示した。だが、新基地建設への影響は問題ではない。
 条例が制定された以上、土砂などを搬入する際に、事業者である国が条例に沿って適正に対応するかどうかが問われる。「わが国は法治国家」と常々強調している安倍政権も条例を尊重し、粛々と従うべきだ。
 条例は環境省などがことし3月に策定した「外来種被害防止行動計画」にも沿ったものである。計画では、国が実施すべき行動として地域における条例などの策定促進を挙げている。安倍政権としても条例制定を歓迎すべきである。
 県内では21種の特定外来生物が確認され、生態系への影響も出ている。県は防除対策で2014年度までに約300億円を支出している。条例には経済的な損失抑制の面でも効果を期待したい。
 新基地埋め立て土砂の採取が予定される鹿児島など6県7地区には、他種を駆逐するアルゼンチンアリや刺されると疼痛(とうつう)などを起こすセアカゴケグモなど特定外来生物9種が定着している。条例はそれらの生物が土砂に混入して県内に持ち込まれることを防ぐことに役立つ。
 昨年の一連の選挙で新基地建設反対の明確な民意が示された。それに続き、国が自ら策定を推進する外来種被害防止に向けた条例でも新基地建設に重いたががはめられたことになる。
 その重みを踏まえれば、国は新基地建設を断念するしかない。