<社説>ギリシャ支援合意 「再生」の出発点にしたい


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 欧州連合(EU)は、ギリシャが増税や年金改革といった財政再建策の一部を法制化することを条件に金融支援することで原則合意した。それによってギリシャのEU離脱も回避された。両者の歩み寄りを歓迎したい。

 金融市場を大混乱させたギリシャ問題は一時的に危機を脱した。だが、昨年末時点で3170億ユーロ(約43兆円)に上る政府債務を解消するのは容易ではない。
 EUは国際通貨基金(IMF)と共にギリシャ向け支援を2010年度以降、2度実施している。計2400億ユーロ(約32兆9千億円)の支援を受けたが、ギリシャは財政再建に失敗している。
 3度の失敗は許されない。チプラス首相が強力なリーダーシップを発揮できるかが鍵となる。
 EUは法制化を確認後、3年間にわたる最大860億ユーロ(約11兆7千億円)規模とされる支援実施に向けた交渉を始める。EUにはギリシャの国民生活への影響に最大限配慮することを求めたい。
 ギリシャの国内総生産(GDP)は09年の危機発覚前に比べ25%縮小し、失業率は25%超で高止まりしている。過度の締め付けはさらなる経済状態の悪化を招きかねない。そうなれば、ギリシャの財政再建はさらに厳しくなる。そのような事態は避けねばならない。
 ギリシャは6月末にIMFへの債務返済を履行できず、事実上の債務不履行(デフォルト)状態に陥った。財政破綻を避けるためには早期の支援再開が不可欠である。議会与野党も迅速な財政再建策の一部法制化に向けて結束して取り組むとみられている。
 問題はチプラス首相が国民投票で国民を鼓舞し、緊縮財政反対が6割超を占めたのを、ほごにしたことをどう収拾するかである。財政再建には国民の痛みを伴うため、国民の理解と協力が不可欠である。国民の信頼を取り戻す努力が求められる。
 一方的に国民投票に踏み切り、「経済低迷はEU側が強いた緊縮策が原因だ」と訴えたチプラス首相に対するEUの不信感は根強い。EUとの信頼関係の構築も円滑な支援実施には欠かせない。
 EUから厳しい緊縮財政を条件に支援を受けたアイルランドとポルトガルは緊縮策を実行して「再生」した。ギリシャも支援合意を「再生」の出発点にしたい。