<社説>MICE施設 5万平方メートル規模が必要だ


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 与那原町と西原町にまたがるマリンタウン地区への県のMICE施設建設決定を受けて開かれたフォーラム「国際観光都市への挑戦」は、施設の在り方に大きな示唆を与えるものになった。

 中でも、展示会を年100本以上開催するリードエグジビションジャパンの田中嘉一常務の基調講演は、沖縄の将来を見据える上でも参考になった。田中氏は「M(会議)」「I(報奨旅行)」「C(国際会議・学会)」「E(展示会)」のうち、「展示会」に的を絞った施設の建設を強く求めた。
 確かに「会議」と「国際会議・学会」については県内既存施設で対応できる。収まり切らない大規模会議ならば、大型「展示会」施設で開催すればいい。「報奨旅行」は、沖縄が目指すいわゆる大型MICE施設とほとんど関係ない。
 箱物を造る際、稼働率や採算性を気にしがちだが、田中氏はMICE施設を「道路と同じ経済の基本インフラ」「集客インフラ」と定義した。施設は客を呼び込むためのもので、赤字を過度に重視してはならないという意味だ。
 田中氏は、赤字が2億円でも1千億円の経済効果がある例を紹介。2億円を投資して1千億円を得たと考えれば納得できる。赤字を大きく上回る経済効果があれば、税収は増える。それを県が有効活用すれば県民の利益になる。
 「展示会は1度開けば継続開催される」「展示会参加者の消費金額は一般観光客の2倍」「展示会都市を目指せば『M』『I』『C』も盛んになる」との話も、数々の大規模展示会を成功させてきただけに説得力があった。
 田中氏は5万平方メートルの施設を2020年までに建設し、近い将来に10万平方メートルへ増設することを提案した。県が想定する最大2万平方メートル規模については「中途半端では大手主催者が進出せず、大規模展が開催されない」とした。
 国内最大8万平方メートルの東京ビッグサイトでも世界で72番目、アジアでは18番目の大きさでしかない。世界から相手にされない施設では、アジアのダイナミックな胎動を引き寄せることはできない。
 田中氏の「ビジネスマンが集結する『大交易都市』を目指せ」とのエールをしっかり受け止めたい。最低5万平方メートル規模の施設が必要だ。予算など課題もあるが、県はその実現に知恵を絞ってほしい。