<社説>USJ進出表明 県全体の利益もたらす場に


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 大阪市の米映画テーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が沖縄に進出する。運営会社ユー・エス・ジェイのグレン・ガンペル最高経営責任者(CEO)が、翁長雄志知事に表明した。

 国内外から人気を集めるUSJの進出は、国際観光都市を目指す沖縄の知名度を高め、経済効果が期待できる。
 しかし、一企業の沖縄進出を菅義偉官房長官が「支援する」と発言するなど、官邸主導色が濃いことに違和感を覚える。同社が本部町の国営海洋博公園で事業展開する予定であることも疑問だ。新たなテーマパークが、地域と連携して沖縄全体の利益につながる場になることを望む。
 USJは開業時、大阪市などが出資する第三セクターだったが、来場者が伸び悩み、米投資銀行ゴールドマン・サックスを親会社とするグループ会社が買収した。「ハリー・ポッター」の新エリア開業により、2015年3月期単体決算の売上高は前期比約44%増の1385億円、純利益は約3・5倍の222億円となり、ともに過去最高だった。
 海洋博公園は、1975年の沖縄国際海洋博覧会終了後、会場跡地は国営公園として整備された。2014年度の海洋博公園の入園者は前年度比6・5%増の434万5261人。沖縄美ら海水族館の入館者が年間323万468人と押し上げている。
 現在、海洋博公園を管理運営している美ら島財団の指定管理契約が19年1月で切れることから、政府は以降の管理をUSJに担わせることを検討しているという。一企業に国が肩入れすることは厳に慎むべきだ。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設へ向け、沖縄側の理解を引き出す「切り札」として官邸が関与しているのではないかとの懸念も広がる。
 美ら島財団は亜熱帯性動植物、海洋文化に関する調査研究など公益性や専門性の高い事業も行い、実績を積んでいる。USJによるテーマパーク化で調査研究事業の存続に影響が出ないか危惧する。
 海洋博公園は首里城と共に、県民の財産として、国営から県に移管を求める声も根強い。
 USJは高いブランド力がある。海洋博公園ではなく、北部の別の場所に新たなテーマパークをつくることによって相乗効果が生まれるのではないか。