<社説>内閣不支持51% 国民の声は安保法案廃案だ


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 共同通信社が実施した全国緊急世論調査で内閣支持率は37・7%となり、2012年12月の第2次安倍政権発足以降で最低となった。不支持率は51・6%と過半数に達し、同種の調査で初めて支持と不支持が逆転した。衆院での安全保障関連法案の強行採決に国民の多くが批判の目を向けていることを裏付けた。「1強体制」をいいことに、このまま強硬姿勢で参院通過、成立を図ることなど許されない。

 調査では政権が安保法案について「十分に説明しているとは思わない」とする回答は82・9%に達している。公明支持層にいたっては94・2%に上り、自民支持層でも64・4%が説明不十分と回答している。
 法案が憲法違反との回答も56・6%と過半数に上った。今国会成立に反対が68・2%、法案そのものに反対も61・5%となっている。過半数が「憲法違反」、「反対」と表明している法案を成立に向けて加速させることは、国民不在の政治以外のなにものでもない。
 安倍晋三首相が国会答弁で「十分な理解を得られていない」と述べていたが、国民は理解した上でノーを突き付けている。
 こうした支持率低下について高村正彦自民副総裁は19日のテレビ番組で「国民のために必要だと思うことは、多少支持率を下げても進めてきたのが自民党の歴史だ」と述べた。さらに法案への国民理解が得られていないことには「刹那的な世論だけに頼っていたら、自衛隊も日米安保条約改定もできなかった」と主張した。国民の声にまったく耳を傾けようとしない、おごり高ぶりの政治だ。
 一方、安倍首相は20年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場建設計画について「白紙に戻す」ことを表明した。多くの国民が現行計画に反対していることを受け止めた結果のようだ。
 それならばなぜ、戦後の防衛政策の大転換となる安保法案も国民の声に耳を傾けて廃案にしないのか。
 安倍首相は4月末の日米首脳会談で、オバマ大統領と安全保障面での日米同盟強化を確認している。つまり国民の声よりも、米国との約束を優先することに固執しているのだ。
 これでは一体、どこの国の政権か。政府・与党は世論調査の結果を真摯(しんし)に受け止め、安保法案を廃案にすべきだ。