<社説>性の多様性尊重 身近な場から人権守ろう


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 心と体の性が一致しなかったり、同性に恋愛感情を抱いたりする人たちの人権を守り、差別や偏見にさらされずに暮らせる環境をつくる機運を高めることを期待したい。

 那覇市は、性的少数者(LGBT)が暮らしやすい社会づくりを目指す「性の多様性を尊重する都市・なは宣言」(レインボーなは宣言)を出した。
 LGBTの人たちが集う催し「ピンクドット沖縄」で、城間幹子市長が「市民と協働し、性自認および性的指向など、性に関するあらゆる差別や偏見をなくし、誰もが安心して暮らせる都市を目指す」と宣言した。
 大阪市淀川区に次ぎ、全国の自治体で2番目の宣言となる。七色のレインボー(虹)に性の多様性を表している。
 那覇市は県内自治体で最初に「女性室」を設けるなど、性の多様化を見据えた先進的対応を展開してきた。当事者団体からの意見聴取も踏まえ、性の多様性を認め、相互理解を深めることを目指す県都の取り組みを評価したい。
 宣言を機に市民の意識を高める啓発活動に一層力を入れ、学校現場でもLGBTの児童生徒への対応力を高める足掛かりにしてほしい。
 性的少数者を表す「LGBT」は、女性同性愛者「レズビアン」、男性同性愛者「ゲイ」、両性愛者「バイセクシャル」、心と体の性が一致しない「トランスジェンダー」の頭文字を取った用語だ。
 偏見を恐れて親や教師、友人にも打ち明けられず、苦しんできた当事者は多い。
 海外では同性婚を認める国が20カ国以上あり、米連邦最高裁は6月に同性婚を認める判決を下した。東京都渋谷区は4月、同性カップルを「結婚に相当する関係」と認め、「パートナー」証明書を発行する条例を施行した。多様な家族の形を認めて性的少数者の権利を保障する動きとして注目される。
 大手広告代理店「電通」が実施した7万人調査によると、性的少数者は全国の20~59歳の男女の約7・6%に上る。学校や職場に13人に1人が該当する割合である。日本ではようやく文部科学省が4月、性的少数者の児童生徒に配慮を求める初めての通知を出した。
 人それぞれが個性と能力を十分発揮し、性的少数者が安心して暮らせる社会づくりに何が必要か。身近な人権問題として考えたい。