<社説>東芝利益水増し うみを出し切り、再出発を


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 東芝の組織的な利益水増し問題を調査していた第三者委員会は、経営トップが利益の水増しに関与し、組織的に実行していたと認定した。

 報告書によると、利益の過大計上額は計1518億円に上る。株主への裏切り行為であり、社会に与えた影響は大きい。許されることではない。
 東芝は実態に見合った適正額を無視して費用を過小に計上することで、利益を膨らませることを繰り返していた。
 インフラ事業では、工事の進捗(しんちょく)状況に合わせて収支を各年の決算に分散して計上する「工事進行基準」を逆手に取り、工事費が膨らんでも意図的に計上しなかった。悪質としか言いようがない。
 歴代3社長は「チャレンジ」などと称して利益の上積みを部下に強要していた。実態と懸け離れた決算を強いることなどあってはならない。企業倫理の欠如も甚だしい。
 報告書は「上司の意向に逆らうことができない企業風土が存在した」とも指摘した。反対意見を言えない悪習を温存し、見せ掛けの目標達成に利用したのである。経営者としてあるまじき行為である。
 今回の問題は、東芝関係者が証券取引等監視委員会に通報したことで発覚した。内部告発がなければ、利益の水増しがさらに続いていた可能性は否定できない。
 企業統治の仕組みを他社に先駆けて整えた東芝は「企業統治の優等生」と称された。だが、社内に設置した監査委員会は機能しておらず、中身が伴っていなかったということだ。
 東芝の利益水増しの背景には、2008年のリーマン・ショックや11年の東日本大震災で収益が悪化したことがある。だが、それは他の企業も同じである。
 多くの企業は血のにじむような努力でその危機を乗り越えた。思った成果が上がらないからといって、利益の水増しに走ることなどもっての外である。
 東芝は洗濯機や冷蔵庫、カラーテレビなど数々の日本初の電化製品開発で国民の生活を豊かにした。世界で初めて開発したものも多く、技術力の高さに定評がある。今回の問題はその評価を台無しにした。
 東芝は歴代3社長が引責辞任し、経営刷新委員会の設置を決めたが、目に見える形で経営改革を断行できるかが問われる。うみを出し切って再出発しない限り、信頼回復は果たせない。