<社説>本島製糖会社合併 新たな生産体制構築を


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 基幹作物として、県内農業の中核を担ってきたサトウキビが岐路に立たされている。

 本島で操業している球陽製糖(うるま市)と翔南製糖(豊見城市)が合併し、9月1日に新会社「ゆがふ製糖」を設立することが分かった。サトウキビの収穫量減少などを受け、2工場体制で採算が取れないのが原因という。
 かつて本島内には製糖会社が5社あったが、そのうち3社が合併して翔南製糖に、2社が合併して球陽製糖に統合された経緯がある。関係者は大規模化と合理化で難局を切り抜けてきたが、農家の高齢化をはじめとした構造的課題が解決できず、1社体制となる。
 サトウキビの生産は統計で確認できる1970年時点で収穫面積が2万7千ヘクタール、収穫量で198万トンあった。70年代半ばに2万ヘクタールを割り込み、収穫量も減少したものの、85年には収穫面積が2万3千ヘクタールにまで回復。89年には178万トンを収穫した。
 しかし94年に初めて収穫量が100万トンを割り込んで以降は、現在まで80~60万トン台後半にまで落ち込んでいる。
 サトウキビ農家の課題は高齢化と生産費の高騰が挙げられる。県の統計によると、60歳以上のサトウキビ農家は90年に28%だったのが、その後10年間で40%に増えた。1ヘクタール未満の小規模農家が約80%を占めている。新規参入がなく、現在ではさらに高齢化が進んでいるだろう。
 生産に必要な種苗費、肥料費、光熱費などをまとめた物財費は10ヘクタール当たり約4万5千円(2005年)だったものが、10年には約6万7千円にまで増えた。
 これでは増産の掛け声がいくら大きくとも農家の生産意欲向上には結び付かないだろう。
 これまでにも機能性食品の開発やラム酒、搾りかすのバガスの活用、バイオエタノール製造などサトウキビを活用した事業は数多い。
 サトウキビ生産の回復には、そうした付加価値を見いだすことも大切になろう。
 だが、当面の課題は生産体制の見直しだ。小規模、高齢化する農家の人と耕地を集約し、効率的に経営できる仕組みが求められる。
 収穫期の重労働を軽減するためにも機械化や生産法人設立などが必要だ。基幹作物の危機を回避するために、官民挙げて知恵を出し合うことが求められる。