<社説>還付金詐欺 被害防止へ目を光らせよう


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 医療費や保険料が戻るなどと言って現金をだまし取る詐欺被害が止まらない。被害者のほとんどは高齢者だ。周囲の人たちが声を掛け合い、被害拡大を防ぎたい。

 県内では今月、公的機関の職員を装った男が「医療費の還付金がある」などと電話をかけた後、現金自動預払機(ATM)まで誘導して、指定した口座に金を振り込ませる詐欺が相次いでいる。
 県警によると、今月3日以降で同様の手口による被害は確認できただけで10件発生している。被害総額は1020万円に上り、未遂に終わった事例など不審な電話も30件発覚している。関係機関は「ATMで医療費などの払い戻しをすることはない」と再三呼び掛けているが、残念ながら被害はなくならない。
 被害の拡大は全国的な傾向だ。警察庁によると、全国の警察がことし1~5月に把握した還付金詐欺は未遂を含め960件と前年同期比で4割増えた。被害総額は10億1800万円で5割増だ。十分に警戒を強める必要がある。
 被害を寸前で免れた読谷村の80代女性は「1人暮らしなので、電話は楽しみ。誰かと会話がしたかったところを狙われた」と話した。
 この女性はATM操作に手間取っていたところ、不審に思った周囲の人に声を掛けられ、難を逃れた。「年金でぎりぎりの生活をしている。返ってくるなら1円でも欲しかった」(女性)という不安に付け込む卑劣な犯罪は許せない。防止に向けて社会全体で意識を高めたい。
 今回の一連の詐欺には、発信元番号が表示されない非通知でかかってくるなど共通点がある。携帯電話を使うよう指示し、金融機関店舗外のATMに誘導する例が多い。非通知通話は着信を制限するなど普段から警戒しておきたい。
 警察庁は還付金詐欺、おれおれ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺を「振り込め詐欺」と定義し、これに「金融商品取引名目」などの4類型を加えて「特殊詐欺」と総称している。2014年の被害額は過去最悪の565億円に達している。
 15年版警察白書は「特殊詐欺」が暴力団の資金源になっているとみて「新たな脅威」と位置付けた。口座に振り込ませるケースのほか、「手渡し型」、宅配便の「送付型」など手口もより巧妙化している。監視の目を強め、被害防止を図らねばならない。