<社説>防衛局協議書提出 また強引な手法使うのか


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 沖縄防衛局は米軍普天間飛行場の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て本体工事着手に向け、前知事による埋め立て承認で付した留意事項に基づく一部埋め立て本体工事の実施設計と環境対策の2点に関する協議書を県に提出した。

 早期の本体工事着手が狙いであり、台風などの影響でボーリング(掘削)調査がなかなか計画通りに進まないことへの焦りが背景にあるのだろう。だが、ボーリング調査が完了していない段階で、工事の全体像が示されないまま、部分的な協議書の提出をもって協議を進めるのは明らかにおかしい。
 環境に対する配慮は全体の工事の流れに大きく関係する。これでは実効性ある環境保全対策などを十分に話し合えない。
 県は受理を保留し、海外出張中の翁長雄志知事が帰国後の週明けに取り扱いを協議するとしている。防衛省は「県が受け取ったので協議は開始した」との認識で、3週間をめどに見解を回答するよう求めている。県との事前協議が整えば、ボーリング調査が終わった浅瀬部分から工事に着手する構えだ。防衛省幹部は不調に終わった場合は協議を打ち切り、着工する可能性も示唆している。
 埋め立て承認後の知事選で示された民意は一顧だにせず、工事を着々と続けていこうとする国の強引な姿勢をあらためて示す手法であり、極めて遺憾だ。
 県は事前協議書への対応も慎重に進めながら、埋め立て承認の取り消し・撤回の判断を粛々と審査していくべきだ。
 辺野古埋め立てに対する前知事の承認について検証した第三者委員会は「法律的な瑕疵(かし)が認められる」と報告した。これを受け、翁長知事は「最大限尊重する」と明言し、承認の取り消しを検討している。
 一方、防衛省の地方協力局次長は自民党国防部会で、翁長知事が埋め立て承認を取り消した場合、公有水面埋立法を所管する国土交通相に不服申し立てを行う可能性を示唆した。「関係法令にのっとり(正当性を)主張する。公有水面埋立法も選択肢だ」と、具体的な対抗措置を明らかにした。
 知事が承認を取り消せば辺野古移設作業は法的根拠を失う。知事の決断が出たならば政府は厳粛に受け止め、直ちに新基地建設の作業を停止するのが筋だ。