<社説>参院「10増10減」成立 「1票の格差」是正に程遠い


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 参院の「1票の格差」是正に向けた改正公選法が成立した。来夏の参院選から選挙区が隣り合う「鳥取・島根」と「徳島・高知」の4県・2合区を含む定数「10増10減」が適用される。

 これにより、最大格差は2010年国勢調査に基づくと2・97倍、ことし1月1日現在の住民基本台帳では3・02倍となる。最高裁が「違憲状態」と判断した13年参院選の最大格差4・77倍に比べ、格差は縮小する。
 だが「1票の価値の平等」という観点からすれば、これを格差是正と認めることはできない。抜本改革に踏み込まず、小手先の改革にとどまったため、格差是正には程遠い内容となった。
 それどころか「鳥取・島根」と「徳島・高知」を合区したことで、新たな格差が生じることになった。憲法は、国会議員は「全国民を代表する」と定めている。だが現実は都道府県代表の意味合いが強い。それがこの4県だけは大きく変わることになる。
 3年ごとの通常選挙で定数の半数が改選されるが、この4県のうち2県は1人も参院議員が選ばれない可能性がある。格差是正によって人口の少ない県の声が国政に届かなければ、本末転倒も甚だしい。
 選挙制度改革の名の下に、人口下位の4県を切り捨てたも同然である。「人口が少ないから」というのでは当該県民の理解は得られない。4県を犠牲にした格差是正は間違いである。
 このような結果になったのは、当の国会議員が選挙制度改革に向けた理念を持ち合わせていないことが大きい。議会制民主主義の根幹をなす選挙制度の改革にもかかわらず、参院の果たすべき役割などについての議論も欠落していた。
 改正案は付則で19年参院選に向け、「抜本見直しで結論を得る」と明記した。格差是正や制度見直しが不十分との認識の表れである。ならば19年参院選では、今回のような中途半端な改革は許されない。
 次の改正に当たっては全ての有権者の「1票の価値は平等」ということを深く認識する必要がある。合区を増やす愚を犯してはならない。4県・2合区も見直すべきだ。
 歳費総額を増やさずに、定数を増やすことで格差是正を図ることも一案である。そのような大胆な改革に踏み切らなければ「1票の格差」是正はなし得ない。