<社説>子どもの貧困 総力挙げた取り組み急げ


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 子どもの貧困は沖縄が最も力を入れて取り組まなければならない課題の一つだ。その対策を急がなければ沖縄の将来にも大きく影響しかねない。

 県が子どもの貧困対策推進計画の策定に向け、児童福祉や自立支援の専門家らでつくる検討会を発足させた。本年度中に計画を取りまとめる方針だ。
 計画策定は、生活が苦しい家庭の子どもの支援を目的に2014年1月に施行された「子どもの貧困対策推進法」に基づく。ことし10月には計画に盛り込む施策を決める。
 県も認めるように、子どもの貧困をめぐる沖縄の状況は極めて深刻だ。計画の策定はむしろ遅いくらいであり、関係機関や専門家らと連携し、ぜひ総力を挙げて取り組んでもらいたい。
 沖縄は1人当たりの所得が全国最下位である。県によると、有業者で年間所得が200万円を下回る世帯割合(12年)は24・7%と、全国9・4%の2倍を超える。非正規就業者率(同)は44・5%と全国一高い。子どもの貧困率が高くなる母子世帯の出現率(13年)は5・46%と全国の2倍だ。
 一方、子どもの高校・大学などへの進学率は全国に比べかなり低い。親の世代の貧困が子どもの教育格差や次の世代の貧困にもつながる「負の連鎖」を止められない重い現実がある。
 子どもの貧困は教育や学力の格差のみならず、健康や虐待、さらには非行、若年無業者など沖縄が抱えるさまざまな課題にも根深く関係している。社会全体で対応していかなければならない重大問題であることは明らかだ。
 1985年に10・9%だった日本の子どもの貧困率は12年には16・3%まで悪化した。今や「子どもの貧困大国」とも指摘され、沖縄では3割程度に達するとみられる。ただ政府は地域ごとの数字を報告しておらず、自治体などからは実態が見えにくいとの批判がある。
 対策づくりには実態の把握が不可欠なことは言うまでもない。政府は詳細な調査とその公表を通じて自治体の取り組みを支援しつつ、ひとり親世帯への支援拡充や支援団体への助成策などの具体化を急ぐべきだ。
 県は推進計画に貧困対策の数値目標も盛り込むという。具体的な数字を掲げる姿勢は評価できる。ぜひ実効性のある施策づくりにつなげ、速やかに実施してほしい。