<社説>検証委報告書公開 国の非論理性を証明した


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 辺野古新基地建設に関する前知事の埋め立て承認を検証する第三者委員会の報告書を県が公開した。承認の不適切性を指摘したが、同時にそれは国の埋め立て申請がいかに非論理的かを証明している。

 公有水面埋立法は(1)合理性(2)環境保全性(3)他の行政の計画との整合性-などを承認の要件とする。その大前提として、当該埋め立てがそもそも必要かどうかが証明されていなければならない。報告書はその大前提が欠けていると指摘した。
 国の言う通り、「普天間の危険性」はもちろんある。だが国は、そこから一足飛びに「辺野古移設の必要性」を主張する。なぜ専守防衛の日本に、敵地急襲型の軍種である海兵隊が存在しなければならないのか。国の説明は抽象的な話に終始し、およそ具体性を欠く。
 百歩譲って西太平洋のどこかに海兵隊を置くにしても、なぜ沖縄なのか、他の都道府県や国外であってはいけないのか。この点に関する沖縄側の質問に対し、政府は具体的回答を全くしていない。必要性の証明は皆無なのだ。
 その逆を証明する事実は山ほどある。報告書が指摘したように、防衛大臣だった森本敏氏は「(海兵隊は)西日本のどこかにあれば、沖縄でなくてもよい。軍事的に言えばそうなる」と述べている。ジョセフ・ナイ元米国防次官補も在沖海兵隊について「豪州移転は賢明な選択だ」と書いた。不必要であることは立証済みなのだ。
 航空機騒音に関して報告書が呈した疑問も本質的だ。日米地位協定で米軍に「排他的管理権」を認め、基地の運用方法で日本側が一切口出しできないとしている以上、騒音対策を米軍が順守する保証は皆無だ。実効性を持つはずがない。
 環境保全策も担保は怪しい。在来種を絶滅させるアルゼンチンアリなど外来種の混入防止策を、国はまるで示していない。サンゴ群落の破壊も、絶滅危惧種ジュゴンの餌となる藻場の消失も確実だ。それなのに国はこれらの価値をおとしめる表現を連ねるばかりなのである。
 行政計画との整合性も欠く。琉球諸島沿岸海岸保全基本計画で、この地域は護岸ですら原則として設けない区域だ。生物多様性おきなわ戦略に違反する可能性も高い。
 どの要件に照らしても違反は確実なのである。政府に理性があるのなら、知事が承認を取り消す前に建設計画を撤回すべきだ。