<社説>NIE秋田大会 問う力育て主権者育もう


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 児童・生徒の考える力、問う力を育てる上で、新聞が果たし得る役割があらためて照らし出された。自立した主権者を育むためにも新聞を通して「問う力」を育てることの重要性を共有した。

 新聞を学校や家庭で活用し、学習効果と生きる力を高めようと、NIE(教育に新聞を)全国大会秋田大会が開かれた。
 スローガンは「『問い』を育てるNIE-思考を深め、発信する子どもたち」。選挙権年齢が18歳以上に引き下げられ、来年夏の参議院選などを皮切りに高校3年生の一部が投票権を持つ。社会の動きを自分のこととして捉え、投票に反映させる意識の向上が一層重要になる。
 それだけに情報の価値判断や批判的思考力を養うことを後押しできる新聞の重要度は増す。大会を通して「主権者教育」が一つのキーワードになった。
 基調提案した秋田県NIE推進協議会の阿部昇会長(秋田大教授)はまず、根拠を示して自らの判断過程を表現する力や批判的思考力を培う「21世紀型学力」にはNIEが有効と説いた。さらに「新聞は民主主義の成立に不可欠だ。社会や政治、経済の動向に警鐘を鳴らし、言論をリードする」と述べた。新聞を生かした主権者教育の充実は喫緊の課題である。
 教育評論家の尾木直樹氏(法政大教授)は基調講演で中学教員時代の実践を紹介した。記事の面白い点、疑問点に線を引かせて読ませることで「生徒が心を動かしながら新聞を読み、感情と表現力が豊かになる」と振り返った。
 尾木氏は、全国学力テスト最上位に位置し「問う力」育成を軸足に置く秋田の教育を「探求する視点が身に付いている」と高く評価した。
 全国トップ水準の学力を持つ秋田県だけにさまざまな先進的な取り組みが報告された。秋田県の学力は中学でも高水準を維持している。その要因の一つに小中学校のつながりの深さがある。授業研究会などには小学、中学の垣根を越えて近隣校から教師が多く参加する。地道な教育の連続性を生み、それはNIEの裾野の広がりにも反映している。
 新聞記事は「問い」の宝庫だ。「なぜ」「どうして」という疑問は学びのエネルギーとなる。日本でNIEが提唱されて30年の節目を迎え、新聞社も教材として生かせる紙面作りに一層努力したい。