<社説>有所見率最悪 健康増進へ運動の推進を


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 このままでは健康長寿の復活など到底おぼつかない。関係機関はそうした危機感を共有しなければならないのではないか。

 沖縄労働局によると、2014年に県内事業所の定期健康診断で、何らかの異常が見られた労働者の割合(有所見率)は63・8%に上り、前年比0・1ポイント悪化した。
 4年連続で全国ワーストの数字だ。非常に由々しき事態であり、この現実をもっと深刻に捉える必要があろう。
 13の健診項目中、沖縄は11項目で有所見率が全国平均を上回った。血中脂質が38・5%(全国32・7%)と最も高く、次いで血圧20・6%(同15・1%)、肝機能20・4%(同14・6%)の順に高い。
 いずれも生活習慣病の要因とされる項目であることに留意しなければならない。働く世代の健康環境の悪化は社会全体の活力に影響しかねない大きな問題だ。
 沖縄では男性の平均寿命が全国26位に急降下した2000年の「26ショック」以降、長寿復活が強く叫ばれてきた。だが10年の平均寿命では女性が1位から3位に転落し、男性は30位とさらに順位を下げた。健康悪化の流れに歯止めがかかっていない。
 県民の健康を取り巻く環境は戦後激変している。急速な食の欧米化と生活様式の変化により、肥満率は著しく高まった。車社会の進展と歩かない県民性、夜型社会と大量飲酒など、他にもさまざまな要因が絡み合うが、事態を放置するわけにはいかない。
 健康長寿の復活はもちろん一朝一夕にはいかない。息の長い地道な努力を積み重ねなければならない。県民一人一人の意識をより高める仕掛けも必要だろう。その意味では官民のさまざまなレベルで健康意識を喚起する運動が展開されていることは心強い。一方では職場や地域全体で健康増進の施策を推進する必要があろう。
 県などでつくる県民会議は6月、40年までの長寿日本一復活の目標に向けた取り組みを示した。労働者の健康に配慮する経営を実践する企業を増やすことも掲げている。
 零細・小規模事業者がとりわけ多い沖縄では、健康診断を受けやすいような環境を整備していくことが健康改善の大きな鍵を握る。働く人たちの健康増進は企業の利益拡大を促し、地域経済の発展と社会の幸福にもつながるという視点で強力に運動を推し進めたい。