<社説>沖国大ヘリ墜落11年 米軍優先の治外法権許すな


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 県民の生命・財産を脅かす重大事故が民間地域で起きても、日本側が事故原因を究明できないという治外法権的な状況が続いている。直ちに是正すべきだ。

 米海兵隊のCH53D大型輸送ヘリコプターが宜野湾市の沖縄国際大学に墜落して11年が過ぎた。県民は市街地の中心にある普天間飛行場の危険性を再認識した。
 同時に民間地域での事故であるにもかかわらず、日本の法律が及ばないという異常事態を県民は目の当たりにした。県警が求めた合同現場検証が米軍に拒まれ、大学関係者も現場周辺から排除された。
 米軍の権限が優先する治外法権的状態が大学内で発生したのである。主権国家においてあるまじき事態は解消すべきだが、その方向に進んだとはとても言えない。
 日米両政府が2005年にまとめた「民間地での米軍機事故に関するガイドライン(指針)」は、事故現場付近に二つの規制線を設け(1)直近は日米共同で規制(2)外周は日本側が規制(3)事故機の残骸と部品は米側が管理-と定めた。
 この指針に従えば、捜査における証拠物件で原因究明に不可欠な事故機を日本側が押収することができない。米軍の機密保持を優先した指針であり、それを受け入れた日本政府の対米追従姿勢は厳しく批判されるべきだ。
 現に08年に名護市の民間地で起きた米軽飛行機墜落事故で、名護署は事故機の押収を申し入れたが、米軍に拒否されている。ガイドラインが見直されない限り、事故のたびに同じ事態が繰り返されるであろう。これでは事故原因がうやむやになってしまう。
 過去には1968年に米軍機が九州大学の施設に墜落した際、米軍は事故翌日の福岡県警や消防の現場検証を認めた。77年に横浜市で起きた米軍機墜落事故では、米軍が機体の主な部分を搬出した後、破片や部品が残る事故現場を神奈川県警、消防、米軍が合同検証している。この事実を重視すべきである。
 住民の生命・財産に関わる米軍機事故はあってはならない。不幸にも事故が起きた場合、日本の法律に基づき当事者の責任追及や原因究明が図られなければならない。
 日本側の権限として現場検証と事故機押収ができるようガイドラインを見直すべきだ。それを米側に求めることは主権国家として果たさなければならない責務である。