<社説>クルーズ岸壁不足 専用バース増設は急務だ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 東アジアのクルーズ船往来が急増している。「限られた富裕層の道楽」というイメージは大きな誤りで、今や幅広い年齢層が楽しむものとなっている。新たな「大航海時代」を迎えているのだ。

 「観光は21世紀最大の成長産業」と言われる。とりわけ東アジアの観光は、仮に一時的な曲折はあっても、長期的に増大傾向が続くのは間違いない。「東アジアのダイナミックな経済成長を取り込む」という21世紀ビジョンの趣旨に照らしても、クルーズ需要を取り込まずして沖縄の将来像は描けまい。その意味でこれは喫緊の検討課題と言える。
 那覇港でクルーズ船を受け入れる岸壁が足りず、ことし4月以降、寄港の予約を断った事例が43件にも上ることが分かった。那覇港管理組合(管理者・翁長雄志知事)は新たなクルーズ船専用岸壁を那覇市内に早期に整備できないか調整に入った。観光需要を逃さないよう整備を急いでもらいたい。
 政府は近年、クルーズ観光誘致に本腰を入れている。外国のクルーズ船社の照会に一元的に対応する窓口を国土交通省港湾局に設置したほか、海外クルーズ見本市にも出展するなどしている。
 その効果か、外国客船の日本寄港は急増している。昨年は過去最高の653回に達した。中でも九州の伸びが高く、博多の99回、長崎の70回が1、2位を占める。沖縄も石垣が69回で3位、那覇が68回で4位に入った。いずれもこの5年で数十回増えている。
 岸壁不足にはこうした背景がある。那覇港の専用バースには1隻しか接岸できない。複数の寄港が重なると、やむを得ず貨物専用の国際コンテナターミナルに接岸させているが、それでも足りずに寄港を断らざるを得ないのである。
 当然、断られた客船は他へ寄港するだろう。目先の観光需要を逃しただけでなく、アジア有数の観光地としてのブランドイメージ確立の機会を逸するという将来価値の損失も計り知れない。
 現在の貨物専用ターミナルの利用にも問題がある。大型観光バスの停車場確保、荷役作業との混在による危険性なども考慮しなければならないのだ。
 そう考えるとクルーズ船用バース増設は急務である。那覇港管理組合は次期港湾計画改定と切り離して先行整備したい考えだ。国交省もその必要性を理解し、両者で前倒し整備に注力してほしい。