<社説>新報特別賞 戦争体験継承を支えよう


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 沖縄戦体験を語り継ぎ平和発信に力を尽くしてきた「青春を語る会」(中山きく代表)と対馬丸記念館(運営・対馬丸記念会=髙良政勝理事長)へ琉球新報特別賞が贈られた。

 戦争体験の風化が懸念される中、沖縄戦の実相を伝えてきたことをはじめ、証言の掘り起こしや資料収集活動など両団体の功績は大きい。非戦、平和創造の思いを県内はもとより県外、国外に伝える地道な活動と、関係者の努力に敬意を表したい。
 青春を語る会の結成は、1999年に開かれた「沖縄戦の全学徒たち展」がきっかけだ。「ひめゆり以外の学徒隊の戦争体験も知り、連携していこう」と同年に発足した。2002年までにひめゆりを含む全ての女子学徒が加わり、平和学習会やフィールドワークなどを通じて次世代に沖縄戦体験を積極的に継承してきた。
 戦争体験を語るだけでなく、06年には体験集「沖縄戦の全女子学徒隊」を出版したほか、「戦争につながるものは許せない」との思いから、教科書検定問題などの県民大会などにも参加している。
 対馬丸記念館は04年8月22日、学童780人を含む1485人に上る犠牲者の鎮魂と、平和と命の尊さを教え、事件を正しく伝えるため、国の慰謝事業として開館した。集団疎開で沖縄から九州へ向かう学童を乗せた対馬丸が米潜水艦によって撃沈されてからちょうど60年に当たる日だった。
 「子どものための平和資料館」として、平和発信の重要拠点となっており、その存在意義をあらためて県民で共有したい。
 安保関連法案成立の動きなど、「戦争ができる国」に向けた動きが顕在化している中、両団体のような平和発信の地道な活動、取り組みが一層光る。県民と共にその存在を誇り、今後の活動を積極的に支えていきたい。
 戦争体験者の高齢化が進み、当時の様子を語れる人は年々減少している。だからと言って、風化を放置しておくわけにはいかない。
 青春を語る会の平和学習会や対馬丸記念館で見聞きしたことを単に受け止めるだけでなく、平和をどう創造するのかを考え、具体的行動に反映させていくかが問われる。これは戦争体験というバトンを引き継ぐわれわれ世代、県民一人一人の責任だ。戦争体験継承の大切さを考える機会としたい。