<社説>シールズ琉球発足 意義深い主権の行使だ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 安全保障関連法案に反対する県内の若者たちが戦後70年の終戦記念日に「自由と民主主義のための学生緊急行動 琉球・沖縄(シールズ琉球)」という組織を発足させた。23日に北谷町で集会を開催するほか、県内で安保法案の廃案を求める取り組みを進める。県内の若い世代が「戦争参加につながる安保法制に反対」と声を上げたことは意義深い。

 シールズ(SEALDs)は10~20代の学生らが中心となり、法案に反対する集会を東京の国会前などで開催している。東京以外にも東北、関西へと拠点を広げ、琉球は四つ目の団体となる。
 琉球の発足声明文は「この不平等な基地負担に由来する住民被害の歴史と、これらの基地から海外の戦地へ軍が派遣されてきたという事実は、決して看過されるべきものではない」と記し、沖縄の基地負担による「犠牲」と「加害」に触れている。その上でこの二つとの決別を誓った。
 「命が危険にさらされる恐怖を、知っています。だからこそ、戦争参加につながる安保法制に反対します」「私たちはこれ以上戦争に加担したくないという強い思いとともに、新たな軍事基地を絶対につくらせないという覚悟を持っています」と記した。沖縄の状況を的確に踏まえた上での主張に敬意を表したい。若い世代にとどまらず、幅広い層に共感を広げるのではないか。
 安保関連法案に反対する抗議行動は全国各地やさまざまな世代へと広がっている。法案が衆院平和安全法制特別委員会で採決された7月15日には一日中続いた集会に約10万人が集まった。中でも若い世代を主導しているのがシールズだ。こうした動きが沖縄に波及していることの意義を受け止めたい。
 安倍晋三首相の祖父、岸信介元首相は1960年に日米安保条約改定を強行し、国会周辺におびただしい数の人が押し寄せた。それから55年がたち、同じ国会前で多くの人が抗議の声を上げている。
 沖縄には安保法制に加え、政府による名護市辺野古への新基地建設強行という不条理が横たわる。シールズ琉球の発足で、沖縄の置かれている過重な基地負担という現実に若い世代の関心が高まることを期待したい。声明が記しているように、若者も「一人一人が『主権者』として行動しなければならない」ときではないか。