<社説>中谷防衛相来県 植民地的状況を改めよ

 相手の足を踏み付けながら、痛みを我慢してこちら側の言うことだけを聞けばいいと言うに等しいのではないか。話し合うことを持ち掛けた側の態度がこうでは、溝が埋まるはずがない。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を伴う新基地建設をめぐり、翁長雄志知事と稲嶺進名護市長と会談した中谷元・防衛相のことだ。
 海上作業の停止を伴う集中協議の一環だが、中谷氏は官僚が作成したであろう想定問答の枠にこもり、「抑止力」を挙げて、辺野古移設の必要性を説く安倍政権の主張を繰り返した。
 在沖海兵隊は主力の歩兵部隊がグアムに移転する。輸送艦、補給部隊との一体的運用は既に崩れている。政府が示す「抑止力」の虚構を突いた翁長知事の問いに中谷氏はまともに答えなかった。
 まず、指摘しておく。「海にも陸にも新基地は造らせない」と公約し、稲嶺名護市長と基地問題の当事者中の当事者である防衛相が新基地問題で会談したのは2012年12月の安倍政権発足後、初めてだ。地元の地元である名護の民意無視を決め込んだ対応は異常だ。
 中谷氏は「市長との距離が縮まった」と感想を述べたが、稲嶺市長がにべもなく否定したのは、当然のことである。
 沖縄への向き合い方を改めることが集中協議の大前提のはずだが、安倍政権にそれはうかがえない。
 11日に菅義偉官房長官と会談した翁長知事は「県民の気持ちには魂の飢餓感がある」と発言した。沖縄の民意をくんだ解決を切望する県民の思いを代弁したのだ。
 だが、沖縄に屈従を強いる政権の姿勢は変わらず、米軍最優先の基地運用と機密保持がまかり通っている。中谷氏はうるま市沖で起きた米軍ヘリ墜落事故の詳しい状況を地元に報告できなかった。
 「植民地支配から永遠に決別し、すべての民族の自決の権利が尊重される世界にしなければならない」。安倍晋三首相は戦後70年談話でこう語った。沖縄が強いられている状況こそ軍事植民地に近い。尊厳を懸けて県民が「自己決定権」の獲得を切望するのは民族自決の権利にも沿う。
 翁長知事が「沖縄を領土としてしか見ていない。140万県民が住んでいる」と手厳しく批判した深い意味を政権は受け止めるべきだ。領土であるのに植民地的状況が続く沖縄の不条理を改める主体はほかでもなく、安倍政権そのものだ。