<社説>辺野古第2回協議 「空手形」は誰のせいか


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 米軍普天間飛行場の5年内運用停止という2013年末の政府の約束が、単なる口約束、「空手形」だったことがこれで明確になった。

 辺野古新基地建設をめぐる県と政府の第2回協議で、菅義偉官房長官は5年内運用停止について、「地元の協力がなければ難しい」と述べた。あたかも知事のせいであるかのような口ぶりだ。
 5年内停止について安倍首相は「知事との約束は県民との約束だ。できることは全てやる」と述べていた。
 だが4月の日米首脳会談でも日米外務・防衛閣僚会合(2プラス2)でも日本側は米側に要求すらしていないし、共同声明にも盛り込んでいない。「できること全て」どころか、何一つやっていないのが実態だ。そもそも当初から米側は完全否定の姿勢で、政府がそれを覆そうと努力した形跡はまるでない。最初から実現するつもりなどなかったのに、知事の責任に帰そうとするのは悪質なすり替えだ。
 政府は、どうせ5年後に県民は忘れている、と高をくくっていたのではないか。そうであれば「朝三暮四」の猿のごとき扱いである。不誠実極まりない。
 それにしても知事の発言は、米軍基地をめぐる「神話」の実態を余すことなく暴いていた。
 沖縄への基地の集中がミサイル攻撃を誘発し、沖縄を危険にさらすという指摘は論理的で正当なものだ。元米国防総省高官などの発言も引用し、説得力があった。
 これに対する中谷元・防衛相の「ミサイル攻撃は日本全体が対象」という発言は、基地が最大の軍事目標になるという軍事常識に反する。「ミサイル防衛で対処する」とも述べたが、ミサイルの集中攻撃を1発の撃ち漏らしもなく防げるはずがない。どちらが合理的かは火を見るより明らかだ。
 本島中南部は過密だから基地を北部に移すという論理に対し、知事が「自然や文化など北部のソフトパワーが死んでしまう。北部を殺すことになる」と反論したのも説得力がある。
 沖縄関係予算は大部分が、どの都道府県も受け取っている通常の予算である。だが「振興予算」と呼んでいるため、他県より特別に多いかのように誤解されている。県は資料まで用意し全国の記者に配ってそのことを説明していた。
 知事は、政府との協議の場を、全国の誤解を払拭(ふっしょく)する場にしている。その努力を高く評価したい。