<社説>米軍ヘリ飛行再開 人命軽視の二重基準許すな


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 墜落原因が判明していないのに事故同型機が飛行を再開した。民間航空機の事故ではあり得ないことだ。人命を軽視する二重基準をこのまま放置してはならない。

 12日に起きた米軍ヘリうるま沖墜落事故で県議会が意見書と抗議決議を可決した。この中で事故6日後に事故機と同型の米陸軍特殊作戦用MH60ヘリが飛行訓練を再開したことに抗議し、飛行停止を求めた。
 県議会の要求は当然だ。無謀な飛行再開によって人命を奪う重大事故が起きかねないのだ。
 意見書は「これまでも米軍は事故原因や再発防止策を公表しないまま訓練を再開するなど、一方的な行動をとってきた」と批判している。これは県民の生命・財産を軽んじる米軍に対する批判であると同時に、米軍の横暴を抑えることができない日本政府、中でも防衛省と沖縄防衛局に対する批判でもあると受け止めるべきである。
 墜落の可能性がある旅客機の運航が許されるだろうか。例えば米航空機大手ボーイング社の新型機787は燃料漏れやブレーキの不具合などのトラブルが起きたため、日米の航空当局は2013年1月に運航停止を航空会社に命じていた。この措置で日本国内では4カ月半、787の飛行が止まった。
 これが重大事故を未然に防ぐ航空行政の本来の姿である。同様の措置は、県内で発生した米軍機事故も対象にすべきだ。事故原因と再発防止策が示されるまで同型機の飛行を止めるよう日本側は米側に強く求めるべきである。
 県民の生命・財産を守る観点に照らせば、沖縄防衛局の対応は極めて不十分であった。事故に関する情報が入らず、飛行再開の事実も19日まで確認できなかった。事故機が「外来機」扱いとなり、横田基地に情報を一元化したためだというが、県民からすれば到底納得し難い。これでは米軍機事故から県民を守ることはできない。
 米軍基地のあるイタリアでは米軍機の飛行はイタリア軍が管制し、米軍はその都度申請し、許可を得るという。事故の検証もイタリア側が主導権を持つ。主権国家として当然の態度である。日本も見習うべきだ。
 今回の事故を受け「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」は住宅地の飛行停止を求めた。基地周辺住民の生命を守る最低限の要求だ。沖縄防衛局は切実な訴えを受け止め、米側と交渉すべきだ。