<社説>天津の大規模爆発 中国は情報開示の徹底を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 中国天津市の大規模爆発は、神経ガスの検出情報が流れるなど事態がさらに深刻になっている。中国当局は全容解明を急ぐべきだ。

 事故は天津市の港湾部にある物流拠点で12日深夜に起き、2度の大規模な爆発があった。計二十数トンのTNT火薬の爆弾に相当する威力があったとされ、死者百人を超える大惨事となった。
 現地入りした北京市公安消防総隊の幹部は、現場の大気中から猛毒の神経ガスと青酸ガスの成分が検出されたと語った。国営テレビが報じたが、天津市環境保護局が強く否定するなど、情報が錯綜(さくそう)している。
 爆心地周辺住民の不安は拡大し、抗議行動も激化している。当然のことだろう。神経ガスの情報について専門家は、偶然合成されることはほぼないとの見方を示す一方、猛毒ガスが出る可能性は否定できないとも指摘している。
 市民の不安解消はもちろん、二次災害を防ぐためにも詳細な情報開示が必要だ。現場では猛毒のシアン化ナトリウムや火薬原料の硝酸アンモニウムなども大量に保管されていたが、有毒物質の拡散状況は明らかになっていない。
 一方、中国共産党は、現場指揮をしていた国家安全生産監督管理総局の楊棟梁局長(閣僚級)に重大な規律違反と違法行為があり、調査中だとする異例の発表をした。楊氏は、爆発があった倉庫の所有企業の会長と知り合いだった。
 楊氏は天津市の副市長から総局長に異動した直後に、危険な化学薬品の取り扱いに関する許可を不要にするなど規制を緩和した。両者に「癒着」があったのか、またそれが事故に結び付いたのか。徹底的な調査と情報開示が不可欠だ。
 爆発から4日後に現場入りした李克強首相は、事故原因を究明し関係者の責任を追及する姿勢を強調した。中国国内では天津市当局の怠慢を非難する声が高まっているが、一方で中国当局は報道機関の独自取材や報道を禁止する通知を出している。
 9月3日の抗日戦争勝利記念行事などの政治日程を控え、中央政府への批判を抑えようという思惑がうかがえるが、早期の真相解明が待たれる中で、情報統制に乗り出すなど論外である。
 事故では日系企業も多くの被害を受け、中国経済への打撃も懸念される。ずさんな安全管理の背景に何があったのか。全容解明に向けた当局の姿勢が問われている。