<社説>大阪・中1殺害 地域社会で子ども守ろう


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 大阪府寝屋川市に住む中学1年の女子生徒が殺害され、遺棄された事件で、死体遺棄の疑いで職業不詳の男(45)が警察に逮捕された。事件前に女子中学生と行動を共にしていた中学1年の男子生徒の遺体も発見された。

 あどけなさも残る中学生2人が殺害され、無残な姿で見つかるという最悪の結果に胸が痛む。2人を救うことはできなかったのか。特異な事件として片付けるわけにはいかない。社会全体で重く受け止め、再発防止に取り組む必要がある。
 逮捕された男は警察の調べに対し、女子中学生に声を掛け車に連れ込んだことなどは認めているが、殺害への関与などについては容疑を否認しているという。犯行動機などを含め全体像がまだ見えない。捜査当局は一刻も早い事件の全容解明に努めてもらいたい。
 被害者の同級生の間で動揺が広がっているという。市教育委員会はスクールカウンセラーの指導・監督役の「スーパーバイザー」を派遣し、カウンセラー派遣回数も増やす方針だ。当然の措置だ。子どもたちが安心して学べる環境を取り戻すため、心のケアには万全の体制で臨んでもらいたい。
 残念ながら今回のような事件はどこでも起こる危険性がある。あまりに凄惨(せいさん)な事件のきっかけとなったのは深夜徘徊(はいかい)だ。以前から深夜徘徊が社会問題化している沖縄は、決して人ごとではない。深夜徘徊で補導される少年は人口同規模県の長崎、愛媛県の約23倍という沖縄の実態を直視し、対策を一層進めていかなければならない。
 特に夏休みは解放された気持ちになり、大胆な行動になりがちだ。深夜徘徊は非行の入り口となり、事件事故の被害者、加害者にさえなることも多い実態を子どもたちに教えなければならない。問題行動を見つけたら、保護者や地域の大人たちは頭ごなしに叱るのはではなく、きちんと危険性を伝えることが大事だ。
 内閣府の全国世論調査では、地域の絆が希薄化している社会風潮や他人の子への無関心が問題だと6割近くが考えながら、約半数の人は問題行動を見ても「見て見ぬふりをする」と答えている。沖縄も例外とは言えない。
 自分たちの地域は自分たちで守ると自覚し、子どもたちの行動に細かく目を配り、子どもを守る社会をつくることを目指したい。