<社説>北東アジア共同体 「心に響く案」追求したい

 「平和学の父」と称される人の発言は示唆に富み、考えさせられるところ大であった。

 ヨハン・ガルトゥング博士が来沖して講演し、「北東アジア共同体」設立が歴史の趨勢(すうせい)だと強調した。その上で「沖縄ほどその本部を置くのに適した場所はない」と述べ、沖縄がいち早く本部設置に名乗りを上げるよう提言した。
 博士自身「沖縄へのおべんちゃらで言うのではない」と述べた通り、単に沖縄側を勇気づけるための空想的な話ではなかった。「欧州連合(EU)の拠点はブリュッセル(ベルギー)やルクセンブルクにある。大国の大都市は意識的に選ばなかった」と説く。沖縄がかつて独立国で、各国からほぼ等距離にある点をも重視した提言だった。
 同時に「政府は『反対』の声に慣れっこになっており、反対だけだと前進しない」とも述べた。「政府が一番嫌がるのは政府案よりいい『プランB』を出すことだ。それは単なる折衷案ではない。折衷案は『怠け者の案』だ。独創的な、人々の心に響く案を出せば、賛同が得られる」と述べた。世界200カ所以上の紛争の調停に携わった人の、経験に基づく提言には大きな説得力があった。
 そのためにどうすべきか。博士は「(1)合法的か(2)人権を尊重しているか(3)基本的必要性に基づくか-の3点に鑑みて、何が実現可能か、大きなビジョンを描くことだ」と述べた。その案には互恵性と平等性が大切とも述べた。
 それは、例えば尖閣で、博士が述べたように「日中が40%ずつ資源を分け合い、残り20%を双方の市民活動や環境保護活動に充てる」というような案のことだろう。沖縄から見ると、沖縄と台湾を加えて日中沖台で4分の1ずつ分け合う案も考えられる。歴史的に、尖閣を領有する根拠を最も持つ沖縄の提唱には一定の説得力があろう。
 講演会では、どの国も手を付けず生物保護区にするとの提言もあった。そんな互恵性ある案を沖縄が提唱し、「全関係国・地域が出席する話し合いの場を提供する用意がある」と打ち出すのは一考に値する。いずれにせよ、この地域の平和構築に役立つ「心に響く案」を追求したい。
 博士は「歴史的に見れば軍拡は戦争につながる可能性が高い」とも指摘した。在沖米軍基地問題の解決にとっても有効な視点だ。軍事力によらない平和を志向したい。



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