<社説>世界同時株安 暮らしの安心つくる政策を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 中国経済の失速を懸念する世界同時株安に市場が揺れている。不透明感が増していることは気掛かりだ。動向を見極めたい。

 25日の東京株式市場で日経平均株価は乱高下し、終値で1万8000円を割り込み、約6カ月半ぶりの安値をつけた。下げ幅はことし2番目の大きさで、6営業日連続の値下がりとなった。
 ニューヨーク株式市場でも24日に1000ドルを超す急落となり、取引時間中として過去最大の下げ幅を記録。欧州株も軒並み大幅安となった。
 リスク回避のため世界的に株式市場から逃避した資金が比較的安全とされる円買いに回り、円高ドル安が進行する動きも見られる。展開次第では、株高と円安を背景に業績を伸ばしてきた日本の大手企業などへの影響も必至だ。
 前週末からの世界的な株安は中国経済鈍化への懸念が発端となった。米国がゼロ金利を近く解除して利上げに踏み切るとの観測も影響している。株安が長引く可能性に留意しなければならない。
 世界を景気後退に追い込んだ2008年の米リーマン・ショック以降、世界経済はゼロ金利と量的緩和といった極端な政策に依存してきた。日本は世界経済の混乱回避に向け米中など関係各国と緊密に協議すべきだ。一方で金融緩和頼みの株高や景気対策の限界を真摯(しんし)に受け止める必要があろう。
 安倍政権は金融緩和と財政出動、成長戦略による経済政策「アベノミクス」を推進してきたが、株価の不安定化でその取り組みは正念場を迎えている。
 株安を受けて自民党内からは景気対策を含む補正予算編成を求める声が出ている。だが公共事業を中心とした従来型の政策なら効果は乏しい。社会保障制度改革や人口減少対策など、暮らしの安心を創出するような構造改革が必要だ。
 日本では昨年10月、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国債中心の安定志向の運用から転換し、国内株式の運用割合を12%から25%に引き上げる見直しを行っている。
 政権浮揚に向け株価を上昇させたい首相サイドの意向があったとされるが、今回の株安は市場動向次第で年金運用に大きな損失が生じるリスクをあらためて浮かび上がらせた。そもそも積立金は国民の財産であり、資産運用の在り方を再度議論すべきである。