<社説>南北緊張緩和 「休戦」を「終戦」にしたい


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 韓国と北朝鮮の高官会談は緊張緩和で合意した。暴発の一歩手前まで行った衝突の危機が取りあえず収拾したことに胸をなで下ろす。この貴重な機会を本格的な緊張緩和につなげ、冷戦の残滓(ざんし)たる朝鮮半島の「休戦」が「終戦」に至るのを期待したい。

 南北関係は北朝鮮で金正恩体制が発足、韓国で朴槿恵大統領が就任して以来、緊張が高まった。2013年3月、北朝鮮は朝鮮戦争休戦協定の白紙化を宣言、翌月には南北協力事業の工業団地の稼働を止めた。韓国は関係者全員を撤収する強硬姿勢で応じ、正常化に5カ月を要した。
 翌年2月には約3年ぶりに離散家族再会事業が実現、10月には北朝鮮高官が訪韓するなど雪解けの兆しもあった。だが今月4日に韓国領内で地雷が爆発し韓国軍兵士が負傷、北朝鮮が仕掛けたと非難した韓国は報復として北朝鮮向け政治宣伝放送を開始した。
 軍事境界線付近で拡声器を通じて行うこの放送は、韓国中産階級の生活ぶりを伝えて南北の経済格差を北朝鮮住民に知らせるのが狙いだ。体制を揺るがしかねないこの放送に北朝鮮は神経を尖(とが)らせて中止を求め、04年の南北軍事会談で中断していた。今回再開した放送では北朝鮮軍高官の処刑情報を流すなどしていた。
 今回の高官会談で北朝鮮は地雷設置は自軍でないと主張、放送中断を求めた。これに対し韓国は地雷設置の謝罪を求め、謝罪があるまで放送中断はしないと突っぱね、膠着(こうちゃく)状態となっていた。
 合意で北朝鮮は地雷爆発に遺憾の意を示し、韓国は放送中断を受け入れた。北朝鮮が過去に遺憾や謝罪を示したのは北朝鮮の行為であることが明確な場合だけだ。北朝鮮は異例の譲歩をしたと言える。
 合意では双方の関係改善努力もうたった。両国の体制がそれぞれ発足してから初めてのことだ。しかも離散家族再会事業だけでなく、幅広い対話や民間交流の拡大にまで合意した。
 10年の北朝鮮による韓国海軍哨戒艦沈没への報復で韓国は経済制裁を始めたが、北朝鮮はその解除を要求し、交流拡大を「人質」にしてきた。今回はその制裁解除にも言及せず拡大に応じている。
 北朝鮮は合意をほごにするのが常だから楽観はできない。だが異例の譲歩が関係改善の好機であるのも確かだ。この機を逃さず、粘り強く対話と交流を拡大したい。