<社説>全国学力テスト 学習環境改善にこそ生かせ


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 4月に実施された全国学力・学習状況調査(学力テスト)で、県内の小学校平均正答率は2014年の全国24位から20位に上昇した。中学校は全国最下位だったものの、国語、数学で全国との差が縮まった。現場の教員をはじめ、関係者の努力が実を結んだ成果だ。

 学習状況調査では「将来の夢や目標を持っている」と答えた割合が、県内は小学校で72・6%、中学校で50・0%と全国平均を上回ったことは特に評価したい。
 県内の児童生徒が学ぶことに意義を見いだしている証しではないか。日々の学校生活で、子どもたちにしっかり目標を持たせるための授業改善が浸透した結果だろう。
 8回目となる全国学力テストだが、あらためてその意義を見直したい。大阪府が高校入試の内申点評価に活用する方針を示すなど、順位だけでなく学校間、児童生徒間の順位を過度に重視する状況は本来の意義を見失うからだ。
 文科省は調査目的を「学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の課題と成果を検証し、その改善を図る」と掲げている。本来の趣旨に立ち戻るならば、調査で得られた課題を教育現場に還元することが何より求められる。
 今回の結果について村上呂里琉大教授(国語教育)は「主体的な言語活動を軸に据えた授業改革が浸透しつつある」と県内の取り組みを評価した上で「いかに内発的な授業改革としていくか、中学校の学びにどうつなげるか」と課題を挙げる。
 児童生徒が自発的に学びたいと思える環境をつくることが教師の役割であり、それを支えるのが教育行政の仕事だ。順位のためではなく、児童生徒のための授業改善という方向性を見失わないよう教育関係者に求めたい。
 一方でテスト対策に時間を取られ、子どもや保護者との意思疎通、学校行事に弊害があるとの指摘は学校現場に根強い。湯澤秀文琉大講師(数学教育)は、反復練習頼みのテスト対策が「考える力を培う機会を奪い、『確かな学力』の育成につながらない」と指摘している。
 全国にも共通するこれらの課題を克服し、長所をさらに伸ばすには、きめ細かな指導が可能となる少人数学級のさらなる拡大や教職員増など予算に裏付けられた施策が必要である。文科省は教育環境の改善にこそテスト結果を活用すべきだ。