<社説>武藤氏未公開株疑惑 国会で真相究明すべきだ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 未公開株をめぐる知人との金銭トラブルが報じられ、自民党を離党した武藤貴也衆院議員(滋賀4区)が記者会見で「辞職につながる法的な問題はない」と述べ、現時点での辞職を否定した。

 国会議員には高い規範意識が求められる。武藤氏の釈明は、法律に抵触していなければ何をやってもいい、と言っているように国民には聞こえたのではないか。
 説明責任を果たすどころか、安保関連法案に反対する学生らを非難した武藤氏の国会議員としての適格性に、さらに疑義が生じる結果になったと言わざるを得ない。
 週刊文春の疑惑報道が事実でないならば、即座に会見を開き、説明責任を果たすべきだった。会見は報道から1週間後であり、あまりに遅い。
 記者会見から週刊誌記者を閉め出したことは一種の報道規制であり、看過できない。記者会見は自身の問題についてあらゆるメディアを通して国民に説明する場との認識が武藤氏には欠けている。疑惑を持たれた国会議員としてあるまじき行為であり、許されるものではない。
 痛いところを突かれたくないために、週刊文春の質問を封じたと受け取られても仕方あるまい。
 未公開株は新規上場後に大きく値上がりすることが見込まれる。それだけに一般の人が入手することは難しい。武藤氏は否定したが、知人にLINE(ライン)で送った「国会議員のために枠を押さえていると一般に知られたら大変」との文面は、国会議員に特別な計らいがあると受け取られて当然だろう。
 秘書の口座が使われたのは、知人が新たな口座をつくることができないためと説明した。それが事実だとしても、秘書だけの問題では済まない。国会議員にも責任があることを自覚すべきだ。
 武藤氏を衆院選で公認した自民党の責任も免れない。離党届の受理前に事実関係を調査し、処分を判断する必要がある。事情聴取もせずに武藤氏個人の問題として片付けることは、国民の政治不信を招きかねない。
 神戸学院大の上脇博之教授は「週刊誌の報道が事実なら、詐欺罪や横領罪などに当たる可能性もある」と指摘しており、武藤氏の記者会見だけで終わりにしてはならない。国会の政治倫理審査会などで真相を究明すべきだ。