<社説>辺野古協議議事録 作成と公開で責務果たせ


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 沖縄の自然環境や県民生活を左右する非公開の協議が県と政府の間で進んでいる。透明性と信頼性を確保し、説明責任を果たす上で議事録の作成と公開は不可欠だ。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設計画をめぐる集中協議で、県と国の双方が議事録を残していないことが分かった。協議終了後に内容を記者に説明していることが議事録を作らない理由という。
 確かに翁長雄志知事や安慶田光男副知事らは終了後の会見で詳細に協議内容を説明している。しかし、このままでは協議の正式記録が残らない。
 行政記録の保存と公開は時代の要請であり、法律にもなった。県、国の対応はそれに逆行するものだ。
 県民、国民が注視する集中協議では、沖縄の基地負担軽減や日本の安全保障をめぐって、さまざまな意見が交わされているはずだ。出席者はいかなる発言をし、協議がどのような過程を経たのかを明確に記録し、公開しなければ文字通り密室協議となろう。
 検証に耐える議事録を残すことで初めて、課題と教訓を学ぶ基礎資料を後世に伝えることができる。記録しなければ県民は永久に検証できない。
 情報公開制度に詳しい前津栄健沖縄国際大教授は「今回の対応は国民の知る権利や情報公開法・条例の精神、行政の責任に反しているのではないか」と指摘した。県、国は重く受け止めるべきだ。
 前県政が辺野古埋め立て承認に当たって国に設置を求めた環境監視等委員会でも、沖縄防衛局は議事録を作成しなかった。その結果、県や第三者が議論の内容を詳細に検証することが不可能となった。
 2012年にも東日本大震災を受けて開かれた政府の緊急災害対策本部や原子力災害対策本部など10会議の議事録の未作成が問題となった。当時の野田佳彦首相は「議論の全体が国民に伝わらなかった部分がある。真摯(しんし)に反省したい」と陳謝している。
 2万人余が犠牲となった大地震に対処した政府の意思決定過程を国民に知らせ、将来へ教訓を残すためにも議事録は欠かせなかったはずだ。
 辺野古集中協議の出席者らはこの愚を繰り返してはならない。仮に議事録作成が意見交換の妨げになると考えるならば論外である。県民、国民への責務を果たすためにも正確な議事録を作成し、可能な限り早期に公開すべきだ。