<社説>粟国の小型機事故 空の安全確認 徹底したい


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 すんでのところで重大な被害を免れたが、大惨事につながりかねない事故であったと言わざるを得ない。

 28日午前、那覇空港を出発して粟国島の粟国空港に着陸した第一航空(大阪)の双発プロペラ機DHC6が、着陸直後に滑走路から右側に大きくそれ、滑走路脇のフェンスに突っ込んだ。空港は滑走路を閉鎖し、旧盆中の利用者に影響が出た。
 機体はフェンスに乗り上げて止まり、右側のタイヤが外れるなど一部が損傷している。空港関係者らは「バーン」という大きな音を聞いたという。かなりの衝撃があったことがうかがえる。
 乗っていたのは子どもを含む乗客12人と乗員2人の計14人だ。打撲や擦り傷などを負った人がいるが、大きなけがはないという。乗客のほとんどは旧盆で古里に帰省する人たちだった。とんだ災難の中、大事に至らなかったことは幸いだったが、発生は極めて遺憾だ。一歩間違えれば深刻な事態だったと受け止めるべきだろう。
 国土交通省は機体の損傷程度が大きいとして「航空事故」と認定し、運輸安全委員会は航空事故調査官を派遣することを決めた。徹底的な調査を求めたい。
 第一航空によると、今回の機長、副操縦士は共にベテランだが、副操縦士は同機の訓練飛行中だった。機長らは同社の聞き取りに対し、28日朝の点検で異常はなく、着陸時まで変わったところはなかったとしている。ただ着陸後、副操縦士がブレーキをかけた際、機体が傾いて右に曲がったという。
 ブレーキにトラブルがあったのか、それとも人為的なミスが理由なのか。あるいは機体の整備、もしくは構造的な問題なのか。厳正に調査し、その結果を早期に明らかにしてもらいたい。
 小型プロペラ機をめぐっては、7月下旬に東京都の調布飛行場で離陸直後の機体が住宅地に墜落し、3人が死亡する事故があり、衝撃を与えた。離島県の沖縄では県外・海外を行き来する多くのジェット機に加え、県内の島々を結ぶ多くのプロペラ機が就航している。
 航空機では何をおいても安全の確保が最優先されるべきであることは論をまたない。空の安全に関わる多くの関係者が事故防止の取り組みを再確認してほしい。利用者に少しでも不安を与えるようなことがあってはならない。