<社説>辺野古沖潜水調査 期間こだわらず徹底的に


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 県はあすから名護市辺野古沖の臨時制限区域内で、サンゴ礁の破壊の有無を調べる潜水調査を実施する。

 翁長雄志知事の調査要求から半年、日本国内の環境を守るための調査すらできない異常事態が続いていた。遅きに失した感がある。調査は10日間の予定だが、重大な環境被害が見つかる可能性は高い。期限にこだわらず徹底的に調査すべきである。
 この間の動きを整理すると国の理不尽さが浮かび上がる。
 政府は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴い、新基地建設海域で海底掘削調査を実施している。
 調査に先だって、埋め立て海域を取り囲む広大な臨時立ち入り制限区域を設けた。制限区域を示す浮具(フロート)や浮標灯(ブイ)を固定する重りとして海底に最大160キロの鋼板アンカー248個を設置したが、大型台風で120個が流出した。その際、大型ハマサンゴ群体を傷つけた。
 失ったアンカーの代わりに10~45トンの巨大コンクリートを投下した。当初のアンカーの62~280倍に及ぶ。単なるアンカーを下ろすという申請時の国の説明は詭弁(きべん)にすぎない。県は巨大ブロック投下は許可していないという立場だ。埋め立て海域とは関係ない場所で、巨大ブロックがサンゴ94群体を破壊した事実は重い。
 県は臨時制限区域内で立ち入り調査を求めたが、米軍は「運用上の理由」で不許可にした。だが、沖縄防衛局には潜水調査をさせるという二重基準ぶりだ。防衛省や外務省は県の調査実現の仲介さえしようとしなかった。日米両政府が県を排除し続けた。
 辺野古海域は、絶滅危惧種が生息し、環境省の有識者会議が生物多様性を認め「重要海域」に選定している。今回の調査で「無許可行為」によって、サンゴの被害など動かぬ証拠が見つかれば、知事は速やかに岩礁破砕許可を取り消すべきだ。これが本来の法治国家の姿である。
 政府は新基地建設作業を1カ月間中断し、県と集中協議している。菅義偉官房長官は29日、自民党県連に対し、作業中断期間を延長しない意向を示した。協議の結果にかかわらず作業を再開する。最初から譲歩する気などなかったのだ。ならば県も第三者委員会の報告書に基づいて、前知事の埋め立て承認を取り消せばいいだけだ。