<社説>安保法制反対集会 草の根の声聞き成立断念を


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 平和国家、立憲主義が崩壊し、戦争をする国に変貌することを許さないという危機感が日本中に充満していることが鮮明に表れた。

 国会審議中の安全保障関連法案に反対する集会やデモが30日、沖縄を含む全国約200カ所超で開かれた。約12万人が国会を取り囲むなど、数十万人に達する最大規模の結集となった。
 那覇市であった「沖縄大行動」には約2500人(主催者発表)が参加し、名護市辺野古への新基地建設断念も強く求めた。「SEALDs RYUKYU(シールズ琉球)」の軽快な掛け声に幅広い層の参加者が応じ、成立阻止へ気勢を上げた。
 安保関連法が成立すれば、米軍基地が集中する沖縄は日米の軍事一体化の拠点となり、有事の際の標的にされ、日本が加わる戦争に加担する役回りを負わされかねない。基地の島の生活実感があるからこそ、沖縄社会は安保関連法と新基地建設に危機感を抱くのだ。
 集会で「安保関連法に反対するママの会@沖縄」の高良沙哉さんが「すくすく育つ子どもたち、これから生まれる命が平和に暮らせる社会をつくるため、戦争法案は絶対に止める」と訴えた。集会アピールは「殺さない。殺させない。子どものために。家族のために」とうたった。子や孫を守り、被害者にも加害者にもなることを拒む決意が凝縮されている。
 全国で、多様な価値観を持つ草の根の市民が主義主張の枠を超え、この国を危うい方向に導いている安倍政権にあらがい、成立阻止の意思を行動で示した意義は大きい。
 元内閣法制局長官や「憲法の番人」だった元最高裁判所判事らも安保関連法案を違憲と明言している。安倍政権は国民の声に耳を傾けて成立を断念すべきだ。憲政史上に残る汚点を刻んではならない。
 県内集会の会場の与儀公園は歴史の節目を照らしてきた。米軍に基地自由使用を認めた沖縄返還に対する抗議集会も1972年5月15日の日本復帰当日に開かれた。米軍のベトナム戦争への出撃拠点だった沖縄は「悪魔の島」とも称されていた。
 43年たっても基地の重圧は変わらない。県民12万2千人が犠牲になった沖縄戦と戦後の米統治、日本復帰、辺野古新基地、安保関連法は県民を危険にさらす地続きの問題である。歴史を踏まえて民主主義を守る主権者として、沖縄から抵抗の声を上げ続けたい。