<社説>県議会意見書 沖縄の声は安保法廃案だ


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 沖縄の意思を明確に示した意見書だ。沖縄戦体験や過重な基地負担の苦悩に照らしても、安保関連法案の即刻廃案が県民の声である。

 沖縄県議会は与党提出の安保関連法案の廃案を求める意見書を賛成多数で可決した。野党が提出した法案の慎重審議を求める意見書は否決された。
 意見書は県民世論にかなうものだ。「戦争法案」の成立を急ぐ安倍政権に県民は強い危機感を抱いている。本紙と沖縄テレビ放送が5月末に実施した世論調査でも73%が今国会の成立に反対している。
 意見書の内容は沖縄現代史に根差したものだ。法案に反対する沖縄の立場を「苛烈な地上戦を体験した沖縄県民は、平和な社会を切実に求めており、再び戦争に加担するための法案は断じて許されるものではない」と論じた。それは県民の共感を呼ぶであろう。
 県民の4人に1人が犠牲となった沖縄戦から70年を経た今なお、戦禍で負った心身の傷は癒えたわけではない。平和を求める沖縄の心の原点に沖縄戦がある。
 ベトナム戦争の前線基地として在沖米軍基地が使われた経験もある。米国の戦争に加担し、アジアの民衆を傷つけた事実を踏まえ、県民は米統治下で「反戦復帰」を唱えたのである。
 安保関連法案の成立を拒否する県民意思はこのような体験と教訓に基づくものである。集団的自衛権は憲法上行使できないという歴代の政府見解を覆した安倍政権への危機感と憤りは党派を超える。
 注目すべきは法案に賛成する野党の自民・公明も慎重審議を求めたという事実だ。否決された意見書は「安全保障法制に関し、国民の理解が深まっているかといえば、各種世論調査の結果から、まだまだ不十分であると言わざるを得ない」と指摘した。厳しい県民、国民世論を反映したものであろう。
 法案に反対する集会やデモが30日に全国200カ所以上で一斉に開かれた。全国の地方議会が国会に提出した閣議決定の撤回や安保関連法案の廃案または慎重審議を求める意見書は7月時点で463件に上る。
 県民、国民世論の大勢は安保関連法案を拒否しているのは明白だ。安倍政権は世論に従い、廃案にすべきだ。衆院に続き、参院でも強行採決することがあってはならない。もちろん「60日ルール」で乗り切るなどもっての外だ。