<社説>16年度概算要求 沖縄予算の議論深めたい


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 2016年度政府予算の概算要求が決定した。来年度は現在の沖縄振興計画の折り返し年だ。年末の予算編成に向け、真の意味での沖縄の発展につながる施策の在り方について議論を深めたい。

 内閣府沖縄担当部局の概算要求は総額3429億円となった。翁長雄志知事の就任後初の予算要求で、本年度当初予算比90億円の増となった。3千億円台の要求は4年連続だ。
 知事は談話で「骨太方針や県の要望を踏まえて要求された」と一定の評価をした。だが辺野古の埋め立てを承認した前知事時代の14年度には3501億円が計上されていたことに留意したい。
 政府は翁長知事就任を受けた15年度予算は14年度から161億円減らしていたが、増額方針に転じた。沖縄への「厚遇」を演出し、米軍普天間飛行場の移設問題で県をけん制する思惑が透ける。
 言うまでもなく辺野古と沖縄予算は別次元の問題だ。政府もリンクしないと説明し続けてきた。
 そもそも沖縄予算は1998年度の4713億円をピークに2000年代半ばまで毎年3千億円を超えていた。沖縄への国からの財政移転額は13年度で全国14位、人口1人当たりでも6位であり、突出して多いわけでもないことを重ねて指摘しておきたい。
 概算要求では本部町の国営海洋博公園への米映画テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」の進出を念頭に置いた調査費が計上された。沖縄観光の魅力向上や経済効果に期待がかかるが、調査には疑問なしとしない。
 地元への説明もない中、一企業の事業計画に政府や自民党が前のめりとなることには違和感を覚える。経済界などからも批判があり、内閣府は事業の狙いや内容を包み隠さず明らかにすべきだ。
 一方、防衛省予算では陸上自衛隊警備部隊の宮古島配備に向けた用地取得費や敷地造成費など108億円が要求された。地元が計画への説明を求めている段階での予算計上は、配備の既成事実化を図るものだと言わざるを得ない。極めて遺憾だ。
 計画をめぐっては宮古島市議会が早期配備の要請を賛成多数で採択したが、市民から反対や不安の声も根強く、市は受け入れの態度を表明していない。陸自は与那国や石垣でも配備計画を進めており、県民的な議論が不可欠だ。拙速に事を進めることは許されない。