<社説>災害弱者支援 個別計画策定も急ぎたい


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 障がい者や要介護認定者ら災害弱者の連絡先などをまとめた名簿を、ことし4月1日時点で作成済みの県内自治体は29市町村(70・7%)で、12市町村(29・3%)が作成中であることが分かった。

 東日本大震災を教訓に2013年に成立した改正災害対策基本法は、本年度から要支援者名簿の作成を全市町村に義務付けている。沖縄の策定率は全国平均52・2%を上回り、全国10位である。だが、順位の問題ではない。
 住んでいる市町村によって救える命が救えないことがあってはならない。住民の安全を守ることは市町村の責務である。災害はいつ襲ってくるか分からない。未作成市町村は作成を急いでほしい。
 東日本大震災では、宮城県の沿岸13自治体で障害者手帳所持者の3・5%に当たる1027人が亡くなった。死亡率は住民全体の2・5倍である。障がい者の死亡率が15%を超えた自治体もあった。福島県でも沿岸10自治体で100人を超す障がい者が死亡している。
 沿岸部に住む多くの障がい者は避難しようにも身動きが取れず、津波の犠牲になったのである。要支援者名簿を整備し、関係者で共有していたならば、救えた可能性がある。
 ただし、要支援者名簿作成だけでは不十分である。災害弱者の避難支援を実効性あるものにするためには、適切な避難経路と避難場所などをまとめた個別計画の策定が不可欠である。要支援者ごとに支援する担当者を事前に複数決め、相互に補完する態勢づくりも必要だ。
 ところが、個別計画を策定済みの市町村は浦添、西原、東の3市町村(7・3%)にとどまっている。個別計画を策定するには要支援者一人一人と面談し、具体的な支援方法について聞き取りする必要があり、時間がかかることは理解できる。
 だが、事は命に関わる問題である。災害時要支援者名簿の作成と個別計画の早期策定で、災害弱者が安心して暮らせる環境づくりは確実に前進する。行政は支援者となる民生委員や自治会などと連携を密にし、災害への備えを急いでほしい。
 地域住民も障がい者や要介護認定者の存在に日ごろから関心を持つことが求められる。行政と地域が一体となって災害弱者を守る万全の態勢を確立したい。