<社説>知事国連演説 承認を取り消してこそ


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 沖縄に対する日米両政府の非人道的な措置が、国際社会の場で明らかになる画期的な機会だ。最大限、効果的な訴えにしたい。

 翁長雄志知事が、辺野古新基地建設問題について今月21、22の両日、国連欧州本部の人権理事会で演説する見通しが強まった。
 知事は政府との間で新基地建設をめぐる集中協議をしているが、演説するか否かは協議の行方を見て最終的に判断するという。政府が急転直下、建設を断念するというなら話は別だが、今の政府にそんな姿勢はない。それなら知事は堂々と日米両政府の非を国連で訴えればよい。
 人権理事会が5月にまとめた対米審査報告書は、米国外の米軍基地が現地の人権を侵害していると明記した。演説の場はその人権理事会だから、沖縄への基地集中が人権侵害だと訴えることになろう。
 国際自由権規約第1条は「全ての人民は自決の権利を有する」と定める。対米審査報告書への明記を働き掛けた沖縄の「島ぐるみ会議」は、昨年の名護市長選、知事選、衆院選4選挙区全てで新基地反対派が完勝した事実を伝え、建設強行は自由権規約に違反すると指摘した。これを受け報告では少なくとも6カ国が「自己決定権の尊重」などを勧告した。訴えが届く素地は既に準備されているのだ。
 問題はその手段だ。
 国際社会への訴えは明確なメッセージでないと伝わり難い。端的かつ直截(ちょくせつ)な行動を伴うのが望ましい。知事は新基地建設が不可能になったと行動で示すべきだ。前知事の埋め立て承認を事前に取り消してこそ、演説は効果的になろう。
 政府は知事の演説に戦々恐々としているのではないか。だから最近になって対話の姿を装っているのではないか。それならなおのこと演説を効果的にする必要がある。
 対米審査報告書はこの人権理事会で正式に採択される見通しだ。米国は「日本の国内問題」と知らぬ顔を装っているが、自国の軍隊による人権侵害を指摘されるのだ。痛くないはずがない。問題に向き合わざるを得なくなるはずである。
 先ごろ沖縄を訪れた国連特別報告者は、沖縄の同意なしに決定された新基地建設は、先住民族の権利に関する2007年の国連宣言に反すると指摘した。国際社会の厳しい視線は沖縄への追い風になりつつある。明確なメッセージでさらにその追い風を強めたい。