<社説>ハブからPCB 汚染源の解明が最優先だ


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 断定はできないとはいえ、米軍基地が発生源と強く疑われるPCB(ポリ塩化ビフェニール)汚染の実態がまた浮かび上がった。県民の米軍基地への不安を一層強く招く事態だ。

 名桜大と愛媛大の研究グループは、浦添市の米軍牧港補給地区(キャンプ・キンザー)の周辺で捕獲されたハブの体内に、有害物質のPCBや、毒性が高く使用が禁止されている農薬のDDTが高濃度で蓄積している例があると明らかにした。高濃度のハブは同補給地区の約1平方キロの範囲内で捕獲されたという。
 同研究グループは2013年に、米軍普天間飛行場や牧港補給地区周辺などで捕獲したマングースの体内にPCBなどが高濃度で蓄積していることも報告している。
 基地内および周辺に特異なPCB汚染源が存在すると考えて間違いないだろう。他の生物や周辺住民に汚染が及んでいる可能性さえある。汚染源の解明、特定を最優先すべきであり、健康や環境への継続的な影響調査の必要がある。
 浦添市は週明けにも、沖縄防衛局や外務省沖縄事務所などに、米軍基地内と周辺の水質・土壌分析調査などを要請するほか、独自でハブなどの捕獲器を20カ所設置する。県民、市民の不安を考えれば、当然の措置だ。
 牧港補給地区は、兵站(たん)基地で、PCBを含んだ電機機器などを保管している。元基地従業員らは、米軍が1960年代以降、浄化などの適切な措置を取らないまま、PCBを水路などに投棄したと証言するなど、さまざまな有害物質の存在や汚染が疑われている。「最も汚染されているのがキンザーだろう」と専門家は指摘する。
 嘉手納基地から南の普天間や牧港補給地区が有害物質で汚染されている可能性は否定できない。だが日米地位協定により、米軍は基地内に貯蔵されている物質を一切明らかにしない。だからといって問題を放置するわけにはいかない。
 米軍は速やかに過去のPCB使用履歴や保管実績などの情報を公表すべきだ。それが「良き隣人」としての当然の行為だ。日本政府も実態把握に乗り出し、米側に情報開示を強く要求すべきだ。
 問題の根底には、米軍に返還跡地の原状回復や補償を義務付けていない日米地位協定の不平等さがある。地位協定の抜本的改定が必要だとあらためて強く訴えたい。