<社説>中国「抗日」行事 国威発揚改め融和優先を


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 工場の操業を禁じてまでこぎ着けた晴天の下、中国の北京で「抗日戦争勝利70周年」を祝う軍事パレードと記念式典があった。

 兵士らの一糸乱れぬ行進に加え、複数の核弾頭を持つ大陸間弾道ミサイル(ICBM)や「空母」を標的とする対艦弾道ミサイルなどが初めて披露された。いずれも米国が強く警戒する装備だ。軍事力強化を喧伝(けんでん)し、日米をけん制する意図もあろう。
 中国は経済が急失速して改革を迫られ、人権派弁護士を大量拘束して「人権抑圧」との批判を招いている。こうした中で、愛国心を鼓舞して国威を発揚し、習近平国家主席と中国共産党の権力基盤の強さを喧伝する狙いが鮮明に表れた。日本を含む周辺国にとっては威圧感を感じざるを得なかった。
 世界第2位の経済大国にのし上がった中国による力の誇示は周辺国にとって威嚇に等しい。軍事力をてこに存在感を強める姿勢を改め、中国は国際社会との協調、融和こそ優先すべきだ。
 今の日本ににらみを利かす行事ではないとしたが、「抗日」の響きは刺激的過ぎる。軍事パレードは建国60年の2009年以来で、「抗日勝利」の節目の開催も外国首脳を招いたのも初めてだ。
 ロシアのプーチン大統領や韓国の朴槿恵大統領ら30カ国余の首脳級が出席したものの、軍備拡張と人権抑圧を警戒する欧米主要国は参加せず、安倍晋三首相も「反日」の色彩が濃いとして見送った。
 国際社会の懸念も意識し、習主席は「永遠に覇を唱えない」とし、「平和」に何度も言及した上で兵力30万人の削減を表明したが、まだ額面通りには受け取れない。東・南シナ海での力による海洋進出を抑制するなど、行動で融和姿勢を示してもらいたい。
 習主席は「侵略戦争以降に生まれた人でも、正しい歴史観、歴史の教訓を刻まねばならない」と述べ、安倍晋三首相が戦後70年談話で植民地支配への謝罪に区切りを付ける意向を示したことを暗に批判した。
 安倍政権と自民党内には中国脅威論をあおり、激しい対抗心をむき出しにする空気があるが、硬軟交えた中国の外交にどう渡り合うのか、戦略は乏しいのではないか。
 「抗日行事」を機に途絶えていた日中韓、日韓の首脳会談開催の道筋が見えたことは歓迎したい。緻密な外交戦略を立て、中韓両国との関係改善を図ってほしい。