<社説>きょう最終協議 決裂なら承認取り消しを


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 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設について、県が埋め立て承認取り消しなどの行政手続き、国が工事をそれぞれ1カ月停止した上で臨んだ集中協議の第5回の最終会合がきょう行われる。

 これまでの話し合いでは県と国の認識や立場の違いが鮮明になっただけで、解決に向けた道筋を見いだすまでには至っていない。県が求めている辺野古移設断念について、国側が歩み寄りを見せなければ協議は決裂する。
 そうなれば翁長雄志知事は第三者委員会が「瑕疵(かし)あり」と結論付けた埋め立て承認を取り消すほかない。
 4回の協議で浮き彫りになったのは、翁長知事ら県側が沖縄への基地集中の不当性を本質的な論拠を基に主張したのに対し、菅義偉官房長官ら政府側は問題をはぐらかしたり、場当たり的な説明に終始したりしている。
 辺野古移設問題の原点について翁長知事は「銃剣とブルドーザーで強制接収されたことだ」と述べ、対日講和条約発効で沖縄を切り捨てて米統治下に置き、復帰後も基地の過重負担を強いる現在までの沖縄戦後史に触れながら、県民の「魂の飢餓感」を挙げた。
 これに対して菅長官は「魂の飢餓感」を問われても「19年前の橋本・モンデール会談が原点だ」と答えている。まったくかみ合っていない。強制接収による基地建設の歴史から意図的に目をそらしているとしか思えない。
 前知事と交わした普天間飛行場の5年以内の運用停止の約束についても菅長官は「前提条件として地元の協力がなければ難しい」と述べ、辺野古移設が前提となるとの立場を示した。政府は前知事の埋め立て承認前に「努力する」と同意したはずだ。これでは約束が違う。そもそも政府は一度も米側と協議をしていない。空手形で辺野古移設の同意を求めるのは筋違いも甚だしい。
 海外の識者らが翁長知事に埋め立て承認を取り消すよう求める「世界は見ている」と題する共同声明を発表した。賛同者は109人に上る。
 最終協議で政府が県に歩み寄りを見せずに決裂すれば、翁長知事は迷うことなく速やかに承認を取り消すべきだ。その判断は多くの県民だけでなく、世界の人々も支えるだろう。