<社説>辺野古県民投票 決意を示す上でも必要だ


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 政府が強行する米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の是非を問う県民投票を、翁長雄志知事が検討していることが分かった。

 県民投票は県民一人一人が沖縄の望ましい在り方を考える絶好の機会だ。県民が当事者として沖縄の重要課題に主体的に関わる機運を醸成する契機にもなる。早期実施を望みたい。
 この間明らかになったのは、安倍政権が沖縄の民意を一貫して無視し、民主主義を踏みにじって恥じないことである。それに屈しない沖縄の決意を示す上で、県民投票は必要だ。
 2014年に実施された名護市長選、県知事選、衆院選沖縄選挙区では、新基地建設に反対する候補が全て勝利した。政府は基地問題だけが争点ではないとして、一連の選挙で示された民意を一顧だにしない。
 琉球新報社と沖縄テレビ放送が合同で5月末に実施した世論調査では、普天間飛行場の県内移設反対が83・0%に上った。県民の5人に4人以上が反対する状況にあっても、菅義偉官房長官は政府方針通りに進めることを明言した。
 菅官房長官は県民投票で反対が多数となった場合でも「日本は法治国家だから、取るべき道はしっかり取っていくことに変わりはない」と述べ、政府方針に影響しないとの認識をあらためて示している。
 もとより県民投票で全てが解決するわけではない。それでも日米両政府に対して、普天間問題の解決を迫る沖縄の強固な意志を伝える力になる。
 自民党総裁選で安倍晋三首相が無投票再選され、民意実現の厳しさは続くだろう。県民投票の結果で政府のかたくなな姿勢が変わらないにしても、民意を無視する政府の理不尽さを内外に示すことはできる。
 それによって国民世論を喚起し、それが日米両政府を揺り動かす端緒となり、民意実現がわずかでも前進することが期待できる。圧倒的民意を発信し、閉塞(へいそく)状況を打開するためにも県民投票は必要だ。
 政府は県の潜水調査終了後、移設作業を再開するとしている。作業を加速し、新基地建設の既成事実化を図る狙いがある。県もそれに対応し、県民投票条例の制定を急ぐ必要がある。早期に県民投票を実施し、新基地建設に反対する民意を政府に突き付けたい。