<社説>豪雨被害 被災者の支援を急ぎたい


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 関東や東北地方を襲った記録的豪雨が各地に大きな被害をもたらしている。被災者の救助や支援に全力を挙げて取り組みたい。

 茨城県常総市では豪雨で鬼怒川の堤防が決壊し、大規模な水害に見舞われた。11日午後の時点で依然二十数人と連絡が取れていない。浸水地域では一時、千人を超える人が孤立状態となった。
 宮城県でも記録的な豪雨となった。同県大崎市で渋井川が決壊して付近の住宅街が浸水し、住民が孤立した。同県内ではほかにも大雨の影響で死者が出ており、仙台市は延べ41万人に一時、避難勧告を出した。
 記録的な豪雨は、台風から変わった日本海の温帯低気圧と日本の東方海上を北上する台風17号からの湿った空気がぶつかり合い、雨の降る区域が帯状に広がる「線状降水帯」が生じたことが原因だ。
 気象庁の担当者が「これほどの長さの降水帯はあまり見たことがない」と話す現象だった。近年増加傾向にあるとされる異常気象の一つだろうか。私たちは想定外の災害に対する準備も怠ってはならないのだと痛感させられる。
 今回の豪雨で気象庁は栃木県で10日午前0時20分、茨城県で同午前7時45分に特別警報を出した。常総市は、鬼怒川の堤防決壊現場となった周辺地域に10日午前2時20分、避難勧告よりも強い避難指示を出している。国土交通省によると、堤防が決壊したのは同日午後0時50分ごろだ。
 昨年8月に広島市で起きた土砂災害で避難勧告の遅れが指摘されたことも踏まえ、関係機関は早めに警戒を呼び掛けた。だがそれでも多くの住民が取り残されたことを重く受け止めなければならない。
 特別警報は「直ちに命を守る行動」を求めるものだが、深夜・未明の情報周知には限界もあろう。今回は朝から水位の異変を知らせる住民らの報告があったという。一方で地震などに比べて近年、大規模な洪水被害が少なかったことが住民の避難行動に影響したとの見方もある。いずれにしても今後、詳細な検証が求められよう。
 鬼怒川は歴史的に「暴れ川」として知られ、過去は堤防の設置や補修が重ねられてきた。決壊地点も10年に1度の洪水に対応できないとして、改修が計画されていた。太田昭宏国交相は1週間程度で応急工事をすると説明したが、他の被災地を含めて対応は急務だ。