<社説>知事取り消し表明 岐路に立つ沖縄の尊厳 自決権持つ存在と示そう

 沖縄は抜き差しならない重大な局面に入った。
 翁長雄志知事は辺野古新基地建設をめぐり、前知事の埋め立て承認の取り消しに向け手続きを始めた。就任後最大の行政権限行使だ。政府が対抗措置を取るのは確実で、法廷闘争に突入する。

 これは単なる基地の問題ではない。沖縄が、ひたすら政府の命ずるままの奴隷のごとき存在なのか、自己決定権と人権を持つ存在なのかを決める、尊厳を懸けた闘いなのである。知事はもちろん、われわれ沖縄全体が今、近代以来の歴史の分岐点に立っている。

耳疑う発言

 ここまでを振り返る。前知事仲井真弘多氏は、米軍普天間飛行場の県外移設を公約にして2010年、再選された。だが13年末、「辺野古移設に反対とは言っていない」という詭弁(きべん)を弄(ろう)し、公約を翻して新基地建設の埋め立てを承認した。病気と称して都内の病院に入院し、病院を抜け出し菅義偉官房長官らと密会した揚げ句のことだ。政府がどう説得したかは知らぬ。いずれにせよ民主主義的正当性と透明性を欠く承認だった。
 翌14年、新基地反対の翁長氏が知事に当選したが、政府は作業を強行した。県の第三者機関がことし7月、前知事の承認に瑕疵(かし)があるとの報告をまとめ、承認取り消しが秒読みになると、政府は県との集中協議に入り、協議が決裂すると即座に作業を再開した。それを受けての知事の決断なのである。
 政府は地方自治法に基づき、取り消し処分の是正を県に指示するだろう。指示に従わないと訴訟を提起し、代執行に持ち込もうとするはずだ。「統治行為論」に見られるように裁判所は政府寄りの判示を繰り返しているから、その訴訟も沖縄側にとって厳しいと予想される。その上でなお反対を堅持し、建設を阻止できるか、知事だけでなく沖縄全体が問われる。
 それにしても今回の政府の発言には耳を疑う。安倍晋三首相は即座に移設作業を「進めていく」と明言した。菅氏は知事の対応について「普天間の危険性除去に関する政府や沖縄の努力を無視しており、非常に残念だ」と述べた。相手の意思を「無視」し、問答無用で行動したのはどちらの方か。「加害者」が「被害者」を装うのはやめてもらいたい。
 民意を踏みにじる政府の強権姿勢がここまであからさまなのも珍しい。しかし、逆説的だが、沖縄に対する政府の本当の姿を明らかにしたという「効用」もあった。

「道具」の再現

 1879年までに明治政府は、武力を用い、独自の王国だった琉球を強引に併合した。太平洋戦争では本土決戦を先延ばしにするため沖縄を「捨て石」にした。戦後、講和条約を結ぶ際には、自らの独立と引き換えに、沖縄を米軍の占領統治下に差し出した。
 普天間飛行場は県内のほとんどの基地と同様、沖縄戦で住民が収容所に入れられている時に米軍が勝手に建設したものだ。それ以外の基地は、1950年代、「銃剣とブルドーザー」で米軍が家や畑を強制接収して造ったものである。沖縄の住民が自ら差し出して建設された基地など一つもない。
 近代以降の歴史を通じて沖縄は、その意思をついぞ問われないまま、常に誰かの「道具」にされ続けた。今回の政府の姿勢はその再現である。沖縄は今後も民意を聞くべき対象ではないとする意思表示にほかならない。
 例えて言えば、あの過酷な原発事故の後、地元町長も知事も反対しているのに、政府が新たな原発建設を福島県で強行するようなものだ。こんな位置付けは、沖縄県以外では不可能だ。沖縄は今後もこうした位置付けを甘受するか否かが問われているのである。
 知事は国連でこうした扱い、歴史的経緯を演説するはずだ。厳しい環境にあってわれわれは「諸国民の公正と信義に信頼」するほかない。粘り強く、沖縄も自己決定権と人権を持つ存在だと訴えたい。



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