<社説>女性の就労環境 男性の意識改革も必要だ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2015年版労働経済白書で、保育所整備が進む地域ほど女性の就業率が高いなど、女性の働きやすさと社会環境の充実に相関関係があることが分かった。白書の指摘を受け、今後各自治体が保育所を増設するなど女性に働きやすい環境をつくることを期待したい。

 白書と同じ日に公表された連合の第3回マタニティハラスメントに関する意識調査(654人回答)も、それを裏付けている。
 連合調査によると、保育園や学童保育など子どもを預ける環境が仕事選びやキャリア形成に影響すると答えた人は83・6%に上った。影響があった人のうち、50・2%は「時短制度など働き方に変化」があり、32・6%は「仕事を辞めざるを得なかった」と答えている。
 働く意欲があったとしても、子どもを預ける場所がないことによって、女性の就労機会が奪われていることが白書と調査の双方からうかがえる。
 沖縄県の場合だと、認可保育所の入所定員(2015年4月1日現在)は34市町村で3万8253人だが、待機児童(14年4月1日現在)は2160人いる。県内の待機児童数は東京などの大都市圏に次いで多い状況が続いている。
 12年の総務省調査では、県内女性の有業率は全国平均の48・2%とほぼ同じ48・4%だが、非正規雇用が59・2%で全国平均(55・7%)を上回る。安定した雇用形態にない上、子育ての環境も整っていないことが分かる。一刻も早い対策が自治体には求められる。
 ただ白書が、女性の就労環境を分析した前提は少子高齢化時代を迎え、潜在的な労働力である女性を活用するためというものだ。働きやすい環境を整備する政策は推進してほしいが、受け皿ができたからといって、子育てに関して女性にしわ寄せが来るような事態は避けるべきだ。
 連合調査では「女性活用」の議論に対して55・7%が「女性だけに働くことと家事・育児の両立を求める風潮に疑問」を感じている。「現場の声が届いていない。机上の空論」という声も45・1%あった。
 女性が求めるのは、環境整備だけでなく、性差による家事・育児の押し付け解消といった男性側の意識改革も含まれる。「女性活用」をお題目にせず、真に実現するには環境整備と意識改革の両面からアプローチする必要がある。