<社説>辺野古テント襲撃 卑劣極まりないテロ行為だ


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 米軍基地の新たな負担を拒む「非暴力の運動」の拠点を暴力で破壊する行為は、卑劣極まりないとしか言いようがない。

 新基地建設に反対する市民らが座り込む名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブのゲート前に、抗議行動に不満を持つ男女約20人の集団が現れ、横断幕を破ったり、市民にけがを負わせたりした。男3人が傷害と器物損壊容疑で警察に逮捕された。
 現場にいたという民族団体の男性は「日本、沖縄をよくするため、つぶさないといけない」と語っている。気にくわない表現や言論を暴力で屈服させようという行為はテロリズムと同じだ。断じて許すことはできない。
 米軍普天間飛行場移設問題には、賛否両論がある。自らの思想、信条に基づき意見を活発に戦わせるのが民主主義だ。賛否の立場を問わず、正々堂々と、自らの表現と言論で戦うべきだ。
 テントを拠点に抗議活動を続ける市民らの元に最近になって「襲撃情報」が入り、警戒していたさなかに事件が起きた。民族団体を名乗る集団が現場に現れ、挑発行為をしたり、付近で酒を飲んだりしたことから、市民らは警察に通報している。夜にはゲート前の警察官に集団の動きに注意するよう要請したという。
 警察は「(市民、集団)双方に言い分があり、一方だけを抑え込むわけにはいかない」としているが、暴力、破壊行為までに及び、けが人が出た。警察は未然に防ぐことはできなかったのか。疑問が残る対応だと言わざるを得ない。
 かつて言論や表現の自由を封じ込めるために使われた「国賊」「売国奴」などの言葉が、辺野古問題をめぐってもネット上を中心にあふれ、暴力的な論理を展開している。
 これらに共感するような一部勢力が新基地建設に反対する県民集会や、若者たちの街頭行動に街宣車で押し掛け拡声器を使い、がなり立てたこともある。「問答無用」「異論を許さない」という勢力が増えつつあると多くの人が感じている。
 新基地を造らせない運動の軸足は徹底した非暴力にある。私たちは暴力で沖縄の民意を抑え込もうとする行為に断固として反対する。抗議を続ける市民らと共に非暴力を貫き、憲法で保障される言論や表現の自由に基づき、沖縄の民意を国内外に発信し続けていきたい。