<社説>辺野古聴取拒否 取り消し時点で工事止めよ


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 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、翁長雄志知事が埋め立て承認を取り消す前に求めた意見聴取について、沖縄防衛局は応じない方針を決めた。このため翁長知事は「言い分を聞いたが、反論はなかった」と判断し、国連演説から沖縄に戻り次第、速やかに承認を取り消す意向を示している。反論の機会を防衛局が拒んだ以上、県が取り消しに踏み切るのは当然だ。

 意見聴取に応じない理由について、中谷元・防衛相は「行政手続法に定める聴聞手続きが実施されるべきだ」と述べている。反論する形が「聴聞」ではなく「意見聴取」だから応じなかったと言いたいようだ。
 行政手続法では行政機関が不利益処分を行う時、相手の言い分を聞く「聴聞」を実施することが求められている。しかし同法第4条で「国」は適用除外になっている。「私人」ではない「国」には聴聞の必要性がない。このため県は法的義務のない「意見聴取」の場を設けたのだ。
 「聴聞」を求めている中谷防衛相の主張は、新基地建設の埋め立て行為を「国」ではなく「私人」として実行しているとの立場を示すものだ。米軍基地を建設する埋め立て工事を「私人」で実施しているなどという主張が果たして通用するのだろうか。
 そもそも防衛局は公有水面埋立法に基づく辺野古の埋め立て手続きで、民間が受ける「許可」ではなく、国が受ける「承認」を県に求めたはずだ。自ら国の立場で手続きをしていたのに、県の取り消しという事態に直面した途端、国の立場ではないと主張するのは論理破綻としか言いようがない。
 国が「私人」の立場を主張しているのには理由がある。県の取り消しを止めるため、防衛局は行政不服審査法に基づく審査請求を国土交通省に出すからだ。審査請求は国の立場では出せない。私人にこだわる必要性がここにある。身内である同じ政府の国交省に取り消しを止めてもらうための苦肉の策なのだ。
 「公有水面埋立法では国だ。この手続き(行政処分対抗策)を取るに当たっては事業者だ」。井上一徳沖縄防衛局長は立場が変わる理由をこう説明する。法的錯誤も甚だしい。防衛局に審査請求をする資格はない。県が取り消した時点で全ての工事を止めるべきだ。