<社説>EU難民分担 人道的努力で内戦終結を


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 欧州連合(EU)は臨時の内相理事会で欧州に多数流入している難民について、12万人の受け入れを各国で分担する措置を賛成多数で決定した。全会一致での決定を目指していたが、東欧諸国の反対が根強く多数決での決定となった。

 分担措置にはチェコ、スロバキア、ハンガリー、ルーマニアが反対した。スロバキアの首相は「EU司法裁判所に訴える」と表明しており、EU内でしこりを残した形だ。
 国連難民高等弁務官(UNHCR)によると、ことしに入って地中海などを渡って欧州にたどり着いた難民や移民らの数は約47万8千人に上る。昨年の21万9千人の2倍を超えている。
 難民の受け入れは欧州だけではない。内戦が激化しているシリア、アフガニスタン、ソマリアからの難民を近隣国トルコが159万人、パキスタンが151万人、レバノンが115万人を受け入れている。それぞれ欧州の2~3倍の規模だ。
 ローマ法王フランシスコが米連邦議会の上下両院合同会議で演説し「世界は第2次大戦後、前例がない難民危機に直面している」と述べた。EUが取り組むべき問題であると同時に、日本を含めた国際社会が支援に結束すべき人道危機であると認識すべきだろう。
 シリアで2010年に内戦が始まって以来、昨年末までに63人が日本に難民申請したが、難民として認められたのは1家族3人だけにとどまっている。日本の受け入れ状況は欧州に比べて極端に少ない。現状のままでいいはずがない。
 外務省はレバノンのシリア難民に自立支援のために2億4千万円、移動経路にあるセルビアとマケドニアには受け入れ施設の整備や食料・医療支援で2億4千万円の緊急無償資金協力を実施することを決めた。こうしたさまざまな難民支援に取り組む必要がある。
 難民の大量流入を生じさせている事態にも目を向けなければいけない。シリア内戦解決の道を模索する必要がある。特に過酷な支配を続ける過激派組織「イスラム国」への対処ではフランスがシリア空爆を検討し、英国も8月にシリア国内で無人機攻撃を実施するなど、掃討に向けて踏み出している。
 しかし軍事作戦だけでシリアの窮状は打破できない。日本を含めた国際社会は、内戦終結に向けて政治的、人道的努力を重ねる必要がある。