<社説>非婚親の寡婦控除 法改正急ぎ不平等を断て


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 法律上の結婚を一度もせずに子をもうけたひとり親家庭(母子、父子)が不利益を被り続けている。ひとり親を救済する寡婦控除制度が非婚というだけで適用されず、不平等が存在している。

 非婚のひとり親世帯について、国土交通省は2016年10月以降の入居分から、公営住宅の家賃引き下げなどの優遇措置を受けられる対象世帯に含める。
 全国一律の優遇措置導入は一歩前進だが、抜本的解決とは言い難い。寡婦控除の対象に非婚ひとり親世帯を加えることが最善の手だてであり、国は法改正に乗り出すべきだ。今回の措置を踏まえ、法改正の機運を高めたい。
 母子世帯の割合が全国一高い県内では、そのうち非婚ひとり親世帯の割合が12・2%に上る。全国平均より4・4ポイント高くこれも全国一で、支援策の充実は沖縄社会にとって急務の課題だ。県議会と21市町村議会が寡婦控除規定の改正を求める意見書を可決していることが切実さを示していよう。
 寡婦控除とは、ひとり親世帯に対する所得税を軽くする措置で、課税所得から27万円(所得500万円以下は35万円)を控除する。所得額を基準に算定する住民税や国民健康保険料、公営住宅賃料、保育料なども安くなる。だが、婚姻歴が条件となっており、配偶者と死別、離婚した世帯と非婚のひとり親世帯の負担の格差は大きい。
 県の13年度の調査によると、県内の母子世帯の就労年収は平均155万円で全国より26万円低い。非婚ひとり親世帯は平均141万円でさらに14万円低く、寡婦控除が適用されないため、暮らしの負担が一層重くなっている。
 県と9市町村の公営住宅で非婚のひとり親世帯にも寡婦控除がみなし適用され、保育料を減免している市町村もある。県都・那覇市の年収200万円の非婚世帯の場合、みなし適用がなければ、住民税や保育料などの負担が寡婦控除対象世帯より年間約31万円も重いという市民団体の試算もある。
 親の生計状況は子どもの生活環境に直結する。重い負担のしわ寄せが子どもに及ぶ悪循環は断ち切らねばならない。「子どもの貧困対策」の観点からも看過できない。
 結婚・子育て観が多様化する中、未婚の人が寡婦控除から除外される「合理性のない差別」(日弁連)を早急に改めねばならない。